交流戦最下位も虎の希望は前川だ 侍右腕から初適時打!チームの課題「6番・右翼」でキラリ存在感

[ 2023年6月11日 05:15 ]

交流戦   阪神3-4日本ハム ( 2023年6月10日    エスコンF )

<日・神>4回1死二、三塁、前川は右前に同点の2点適時打を放ち、雄たけびを上げる。投手伊藤(撮影・北條 貴史)
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 阪神・前川右京外野手(20)が、10日の日本ハム戦でプロ初打点を挙げた。今春WBC日本代表の伊藤大海投手(25)から4回、一時同点となる2点右前打を放った。57試合目で今季初の3連敗を喫し、ロッテと並ぶ交流戦最下位に転落したチームの低調にあって、高卒2年目の活躍が明るい材料。2試合連続で先発で守備に就き、チームが開幕から固定できていない右翼の定位置確保へ大きくアピールした。

 1点ビハインドの9回2死無走者で回ってきた第4打席。前川は守護神・田中正のフォークを引っかけて一ゴロに倒れた。チームが3連敗となる27個目のアウトを取られ、いつもより口数が少なかったが、短い言葉で収穫を口にした。

 「あの場面で打点を取れたのが良かった。今までチャンスで何もできていなかったので…」。低調な猛虎打線にあって、この日、最もバットで沸かせたのは前川だった。

 あの場面、とは2点を追う4回1死二、三塁。今年3月のWBCで侍ジャパンの14年ぶりの世界一奪回に貢献した右腕・伊藤がマウンドにいても、迷いはない。3ボール1ストライクからの5球目、内角寄りの147キロの直球をはじき返した。一、二塁間を破る適時打でプロ初打点。一塁ベース上で初々しく右手を突き上げた。「あの場面で打点を挙げられたのは良かった」と繰り返し、少しだけ余韻に浸った。

 5月はウエスタン・リーグで打率・357を残し、月間MVPに輝いた。ただ、本人は結果を残しても内容に納得していなかった。理由は構え、トップの位置、スイング軌道が自らの思い描くものと程遠かったから。思考を巡らせ過ぎて、持ち前のフルスイングができない時期もあった。そこで自らに課したのは「走り打ち禁止令」。フルスイングができなければ「ダメです」と、安打の“質”にまでこだわった。

 5月30日の1軍昇格後も同様だ。「まだバットが最短距離で出ない」と、構えは今も毎試合、微妙に違う。だが、試行錯誤が続く中で、この日の一本で出場連続安打を4試合に伸ばし、潜在能力の高さを示した。

 前夜の一戦に続き、この日もDHではなく右翼の守備に就いてフル出場した。開幕前からチームの課題だった「6番・右翼」の定位置争い。岡田監督が「外野はまず打つこと」と方針を掲げる中で、試合を重ねるごとに前川の存在感が増している。「明日(11日)も頑張ります」と背番号58は言った。貪欲に求めるのは、チームが勝つための快打。その積み重ねが、レギュラーの座をたぐり寄せる。 (石崎 祥平)

《次戦も「侍撃ち」に期待》
 ○…前川には次なる「侍撃ち」にも期待がかかる。13日からは本拠地・甲子園に戻ってのオリックス戦が控えており、ローテーション通りなら3連戦の初戦に山本が先発する。前川は高卒ルーキーだった昨年3月18日のオープン戦で、5回無死一塁から山本のカーブを左前打した。2年連続で沢村賞に輝いている球界屈指の右腕に、シーズン本番でも痛打を浴びせられるか。

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2023年6月11日のニュース