“100勝の先輩”野茂とダブる パドレス・ダル、30代半ばで迎えた2度目のピーク

[ 2023年6月11日 02:30 ]

ナ・リーグ   パドレス9―6ロッキーズ ( 2023年6月9日    デンバー )

<ロッキーズ・パドレス>メジャー通算100勝目を挙げ、笑顔を見せるパドレスのダルビッシュ有
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 日本投手では野茂英雄以来2人目のダルビッシュのメジャー通算100勝。97年から大リーグ取材を続ける奥田秀樹通信員(60)が、03年に100勝に到達した野茂とダルビッシュを比較した。

 野茂がドジャースで通算100勝目を挙げた03年、ロサンゼルス・タイムズ紙の重鎮記者ロス・ニューハンが「ヒデオの凄さはキャリアの中で2度目のピークを迎えていること」と語っていた。95年のデビューから3年連続2桁勝利も、ド軍は力が落ちたとして98年メッツにトレード。だが02年に復帰し、2年連続16勝を挙げた年だった。

 「一度落ちてまたトップレベルに、というのはメジャーでもなかなかない。特に日本選手は年齢的にメジャーデビューが遅いから難しい」と同氏。ダルビッシュも2度目のピークを迎えている。12年から3年連続2桁勝利も、15年の右肘じん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)後、勝ち星が増えなかった。だが、コロナ下で短縮シーズンだった20年に8勝(3敗)で日本選手唯一の最多勝。昨年は16勝で36歳の今、再び白星を重ねている。

 なぜ、可能だったのか。さまざまな要素があるが、MLBのテクノロジー進化を積極的に生かしたことにあると見る。昨年7月、本拠地ペトコ・パークのクラブハウスでの会話で驚いた。「チームのデータベースを使って、スカウティングリポートを作るのが楽しくて」。ラップトップを広げながら相手打者の名前を入力し「22年の対右投手のデータが全て出てくる。球種は、コースは、その打率は?直近に絞ったらどうか、とか。こうやって1球目から全部作っていく」。元々凝り性。コーチよりも勉強してやろうと思っていると笑った。飛躍的に精度が上がった数値や、さまざまな映像を活用。17年ごろは「今まで自分のポテンシャルだけでやっていた」と話していたが「こういう作業を続けているおかげで、長いイニングを投げられるようになったのかな」と変化を口にした。

 ピッチクロック導入も追い風だった。昨年まではコンビを組む捕手に、試合前に打者一人ずつ配球を説明する必要があった。さらに豊富な球種で、捕手主導のサイン決定に時間を擁し投球間隔が長い投手と言われてきた。だが、今季はピッチコムで自身が球種を選び捕手に伝えるようになり、投球リズムがすこぶるいい。早い段階で野茂の123勝に迫ることになるだろう。

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