古豪・桐蔭、10年ぶり4強 サヨナラ打のヒーロー「目標は甲子園での勝利」 大ピンチにも笑顔のエース

[ 2022年7月24日 14:18 ]

第104回全国高校野球選手権 和歌山大会準々決勝   桐蔭4―3神島 ( 2022年7月24日    紀三井寺公園野球場 )

<桐蔭・神島>サヨナラ生還の原田(左端)、サヨナラ打の谷山(中央)を中心に歓喜の桐蔭ナイン
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 同点の9回裏、2死三塁、桐蔭・谷山洸陽(3年)の一打は右前に弾んだ。サヨナラだ。ベンチから飛び出した選手たちは歓喜の輪をつくった。

 「ボール球でしたか。気持ちで打ちました」と高め直球をたたいてライナーにした。今大会過去2試合は無安打で「あまり期待されてなかった」と苦笑する。それでもベンチの「コウヨウ! おまえならできる」の声に奮起しての一打だった。

 スタンドでは出身の和歌山リトルリーグの前川敦英監督(50)や少年少女たちが応援していた。1968(昭和43)年には世界選手権を制した名門チームだが、谷山が少年時代は6年生が3人しかなく、連合チームで臨んでいたそうだ。「スタンドを見上げたら、子どもたちがたくさんいたので分かりました。いいところを見せられて良かった」

 試合は1回裏に4番・高野東我(とわ=3年)の2点二塁打、永岡里基(2年)の適時打で3点を先制。だが、4回裏にはスクイズ本塁憤死など、矢野健太郎監督(32)は「追加点が奪えず、苦しかった」と打ち明ける。試合前から「終盤勝負」と話していた通りの展開となった。

 そして9回表、2死から追いつかれた。2点リードの2死満塁の時点でマウンドに内野陣が集まった。ベンチから伝令が出た。このピンチでも背番号「1」のエース、寺田祐太(3年)は笑っていた。グラブで口を隠していたが、目が笑っている。

 二塁手の主将・有本健亮(3年)が「寺田を信頼していこう」と声をかけた。「自分の所に飛んで来いと強い気持ちで守ろう」と話した。

 押し出し四球で1点差。迎えた神島の4番・宮崎崇徳(3年)を0ボール2ストライクと追い込んで勝負球は内角直球。これが押し出し死球となって同点に追いつかれた。「ベストボールでした。内角直球での勝負に悔いはありません。思いっきり投げて打たれた記憶はあまりない。あれ(死球)は相手の気持ちが勝っていたんです」

 それでも、寺田は笑っていた。「ふだんから笑いながら投げているんです。みんなも“笑え、笑え”と言いますし。苦しい時も笑った方が力が出せるのかもしれない」

 同点の2死満塁から柏木稜平(2年)を空振り三振に取り、勝ち越し点は許さなかった。思えば、7回表、8回表のピンチも最後はすべて笑顔を浮かべてから空振り三振に切っていた。

 大会本部によると、桐蔭のベスト4進出は10年ぶりで、1948(昭和23)年以降で20度目。戦前、旧制・和歌山中時代を含めた資料はないが、相当な回数になるだろう。

 主将の有本は「近年の桐蔭は準々決勝の壁とか言われていましたので、素直にうれしく思います」、寺田は「伝統ある桐蔭で歴史を刻めたと誇りに思います」と話した。

 サヨナラ打を放った谷山は「僕たちの目標は“甲子園で勝つこと”ですから。まだまだこれからです」と表情を引き締めた。21世紀枠で出場した2015年センバツ以来の甲子園も視界にとらえている。 (内田 雅也)

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