なぜ夏は疲れやすいのか?災害級の暑さが体力を奪う理由

[ 2024年8月7日 09:00 ]

猛暑日が続き、夏バテを感じている人も多いのでは。体がだるい、食欲がない……暑さが体力を奪っていく理由を、「寒暖差」と「紫外線」にフォーカスして探っていきます。

疲れの原因1 夏の寒暖差

熱中症対策のためにも必要不可欠になるクーラーですが、室内はエアコンでキンキンに冷えているのに外は猛暑といった、 “室温”と“外気温の気温差が3度以上あると、自律神経の乱れにつながります。

自律神経が乱れると、疲労やだるさ、頭痛、イライラなどにつながることも。

冷房が効きすぎている、出入りが多い人は注意!

1〜2時間ごとに外と室内に出入りする頻度が多い人などは、とくに自律神経が乱れやすい環境にあります。

短時間で気温差が3度以上違うと、疲労や頭痛などが起こりやすく、さらに1日の最高気温と最低気温の差が7度以上あると、気分もうつっぽくなるなど不調が生じやすいとされています。

今年は特に暑く、外気温が35度を超える日が多いと予想されます。暑い屋外とクーラーの効いた室内の温度差で、このような変化に悩まされる可能性が高いと考えられます。

自分でできる自律神経チェック!専門家監修

こうした夏の寒暖差疲労におすすめの対策を、イシハラクリニック副院長・石原新菜先生に解説いただきました。

イシハラクリニック副院長 石原新菜先生

メキシコのゲルソン病院、ミュンヘン市民病院の自然療法科、英国のブリストル・キャンサー・ヘルプセンターなどを視察し、自然医学の基礎を養う。現在は漢方薬処方を中心とする診療を行うかたわら、テレビ・ラジオへの出演や、執筆、講演活動なども積極的に行い、美容と健康増進の効果を広めることに尽力している。二児の母、また女性としての視点からアドバイスにも定評がある。

石原先生直伝! 自律神経を整えるための対策

1.体をあたためる

強い冷房やキンキンに冷たい飲み物は身体を冷やし、 自律神経も乱れやすくなってしまいます。

日本人の平熱は約60年前に比べて1℃近くも下がっているといいます。冷えすぎている場合、なるべく身体を温めることを心がけましょう。

石原先生的には、腹巻をつける、 湯船に浸かる(夏は38〜 40度の少しぬるめの温度)温かい飲み物を飲むことを挙げています。

2.腹式呼吸を行う

腹式呼吸は自律神経を刺激し、副交感神経をオンにしてくれます。これにより、心身をリラックスさせてくれます。

日中は浅い呼吸になりがちなので、寝る前は長く吐くことを意識しましょう。 おすすめは、仰向けになって目を閉じて8〜10回行う『腹式呼吸』です。

眠れないときに。寝つきをよくする「仰向け腹式呼吸」

3.ビタミンC、ビタミンDの摂取

スタミナをつけようと焼肉やうなぎなど油っこいものを食べると、かえって胃腸に負担がかかることも。消化に良い食べ物や、体の調子を整えるビタミンCとDをしっかり摂ることがおすすめです。

ビタミンCはストレスに強くなり、 神経を落ち着かせる働きが。ビタミンDは心や神経のバランスを整えるセロトニンを調節し、 自律神経のケアに重要な睡眠や、うつなどのメンタル症状に効果が期待できます。

ほか、カルシウムの吸収を助ける働きもあるため、骨粗鬆症のリスクが高い世代はとくに摂るべき栄養素の ひとつ。

●ビタミンDはサプリメントもおすすめ

ビタミンDは日光に当たることや食事から摂取することで体内に補給できますが、食生活や生活スタイルの変化により、現代の日本人は98%が ビタミン不足しているというデータもあります。

とくにUV対策を積極的に行っている人は、それ故に日光が遮られ、ビタミンDが少なくなりがち。もちろん紫外線の害も大きいので、UV対策は行いつつ、いつもの食事に加えてサプリメントからも摂取するのもおすすめです。

疲れの原因2 紫外線による疲労感

炎天下の外出や屋外運動により、疲れを感じた経験がある方は多いのでは。

日焼け止めを使って紫外線をカットすることで、疲労感が軽減されるという研究データが、資生堂から発表されました。

屋外運動時に紫外線を浴びると、心身にどんな影響があるか

同社の研究では、日焼け止めなどを用いて紫外線から肌を守ることで、運動中や運動後24時間後までの間、疲労感を軽減することを確認したといいます。

日焼けによる肌の赤みの度合いと疲労感が相関することを見出し、日焼け止めを用いることで、運動後の筋肉痛の感じ方が軽くなる可能性があることも明らかにしました。

日焼け止めを塗ることで疲労感が軽減する

健康な成人男女16名を、紫外線防御あり・なしの2つの群に分けて、沖縄で試験を行いました。

  • 紫外線防御ありの群

資生堂が開発した日焼け止め製剤(SPF50+、PA++++、スーパーウォータープルーフ)を肌に塗布

  • 紫外線防御なしの群

日焼け止めから紫外線吸収剤・散乱剤を抜去した、日焼け止め効果のない基剤を塗布

外でシャトルランをさせた結果

屋外にてシャトルラン形式の運動(60分間で4セット実施)を行い、血中疲労関連因子の一つである血中乳酸値※1の濃度や主観的な運動強度、筋肉痛の感じ方などを調べました。

※1 乳酸は、糖質が解糖系(嫌気的代謝)で代謝・分解されてできる生成物で、筋肉でエネルギーを作るとき、糖(グリコーゲン)が分解されて生成されます。運動時には、生成された乳酸がエネルギー源として再利用されますが、激しい運動をした後に蓄積することが知られており、血中乳酸値を調べることで、運動による疲労の程度を推察することができます。

日焼けするほど運動後に大きな疲労感を感じた

その結果、本実験において、日焼けの度合いを示す肌の赤みが強いほど、運動後に大きな疲労感を感じること(図4)や、紫外線防御無しの群は、紫外線防御あり(日焼け止め塗布)の群と比べて、疲労を感じやすい傾向にあることが分かりました(図2)。

さらに血中乳酸値は、紫外線防御無しの群において、運動直後に有意に上昇しました(図5)。

また、運動後の肌の赤みの変化量が、運動時の血中乳酸値の変化量や酸化ストレスの変化量と比例することも確認しており、以上の結果から、日焼け止めを用いて紫外線から肌を守ることで、運動時の疲労感を軽減できることが推察されました。

日焼け止めを塗ったほうがリカバリーも早い傾向

主観的な運動強度(きつさ)は、運動後半(Set3からSet4にかけて)において、紫外線防御あり(日焼け止め使用)の群の方が紫外線防御なしの群に比べて低値を示し、運動後半になってもきつさを感じにくい傾向にあることが分かりました(図6)。

主観的な筋肉痛は、紫外線防御無しの群でのみ、24時間後に有意な増加を示すことから、紫外線から防御することで、運動後の全身筋肉痛を抑えることができることが示唆されました(図3)。

また、運動の6時間後、24時間後の疲労感も、紫外線防御有り(日焼け止め使用)の群の方が低くなる傾向がみられました(図2)。

これらの結果から、紫外線から防御することで、運動中のパフォーマンスや運動後のリカバリーに良い影響があることが示唆されました。

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本研究は、獨協医科大学基本医学基盤教育部門 講師/早稲田大学スポーツ科学研究センター 招聘研究員 枝伸彦先生との共同研究によるものです。

本研究の成果の一部は、2020年9月24日~26日にWEB開催した第75回日本体力医学会大会にて発表しました。

夏は心の不調も起きやすい

また、猛暑や大雨などによる気圧の変動は、心身に影響を及ぼします。最近では「気象病」という言葉も出てきており、気温や気圧で精神面にも影響が出る人も少なくありません。

夏のメンタル不調について、よくある要因を探っていきます。

猛暑によるストレス

猛暑は身体的なストレスを引き起こしやすいのは、皆さん身をもって体験しているでしょう。

高温下での活動は体温調節機能を乱し、熱中症のリスクを高めます。また、体力の消耗が激しくなるため、心の疲労も増加し、イライラや不安感が増える傾向があります。

連日の猛暑で夜間の睡眠が妨げられることも多く、睡眠不足が心身の回復を妨げ、日中の集中力の低下や倦怠感を引き起こします。

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天候の変化による気圧の変動

大雨や台風などの気圧変化も、心の健康に大きな影響を与えます。

気圧の急激な変化は自律神経に影響を与え、不安感やめまい、頭痛を引き起こすことがあります。また、連日の雨による日照不足は、気分の落ち込みや無気力感を増幅させる要因となります。

これらの気象変動は、特に気圧の変化に敏感な方や天候による体調不良を感じやすい方にとって、大きなストレスとなります。

自分でできる自律神経チェック!専門家監修

日常生活のリズムの崩れ

猛暑や大雨が続くことで、日常生活のリズムが乱れることも心の不調の原因となります。

たとえば、外出を控えがちになり運動不足に陥ることや、エアコンの過剰使用による冷えが続くと、体調を崩す原因になります。

また、外出の機会が減ることで、社会的な交流が減少し、孤独感やストレスを感じやすくなると考えられます。それにともなう睡眠や食生活の乱れも、心の不調を引き起こす一因に。

夏にやりがちな生活習慣の変化

夏は、冷たい飲み物や食べ物を摂る機会が増え、胃腸に負担をかけることがあります。胃腸の調子を崩すと、体調が整いにくくなり、心の健康にも悪影響を及ぼします。

また、暑さから逃れるために室内で過ごす時間が長くなりがちな季節です。これも運動不足や日照不足につながり、心の不調を引き起こす一因となります。

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<Edit:編集部>

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