筋トレ後に眠くなるのはなぜ?専門家に聞いた、眠気の原因と対策

[ 2024年6月25日 09:00 ]

筋トレ民たちの間で囁かれる密かな悩み、それは「筋トレ後の眠気」。筋トレ後に、モーレツに眠くなるというのだ。なかにはトレーニング中に眠い、だるい、睡魔に襲われる、翌日の眠気がとにかくツライという話も。

では、なぜ筋トレをすると眠くなるのか? 筋トレ中や筋トレ後のカラダの中では一体何が起こっているのか? 筋トレが眠気を引き起こすその理由を、日本体育大学体育研究所助教授で健康科学・スポーツ医科学を研究する鴻﨑香里奈さんに聞きました。

なぜ筋トレ後に眠気が起こる? 5つの原因&メカニズム

筋トレをすると、カラダの中では実にさまざまなことが一気に起こっています。筋トレ後に眠気が起こる原因としては、以下の5つがあげられます。

【1】エネルギー消費による血糖値の低下

筋肉を動かすためにブドウ糖(エネルギー)が消費され、血糖値が低下する。そのため脳が栄養不足状態となって働きが鈍り、眠気を感じるようになる

【2】筋トレ中に分泌される成長ホルモンの影響

筋トレで上昇した血中の乳酸濃度がペプチドホルモン、つまり成長ホルモンの分泌を促進。本来は睡眠時に活発に分泌され深い眠りを誘発する特性を持つ成長ホルモンだが、過度な運動や低血糖状態にも分泌されて眠気が生じることに

【3】筋トレによる疲労

筋肉を酷使したことで壊れた筋組織を修復するエネルギーを蓄えるために必要な休息をカラダと脳が欲し、眠くなる

【4】体温の急激な低下

筋トレをすると血管が拡張し血流が増加することにより体温が上昇するが、筋トレ後にカラダを動かすのをやめると汗をかいたカラダの体温は急激に下がる。睡眠時に体温が一気に低下するのと同様の変化を引き起こすため、脳が寝ようとする

【5】交感神経から副交感神経へのシフト

活動を支える交感神経とリラックスを司る副交感神経、カラダは常にこの2つの自律神経でコントロールされている。筋トレ後の眠気は、動から静の自律神経のシフトによって引き起こされる

眠気に従って寝てもいい?

では、筋トレ後の眠気に素直に従い、すぐに眠ってしまってもよいのでしょうか。

「トレーニング直後に眠ってしまうと、まれに低血糖症状を引き起こしたり、十分な栄養摂取(プロテインや糖質など)を行わなかったためにトレーニング効果を減弱させる可能性が考えられることから、ある程度時間をおいて睡眠に入ったほうがいいですね」(鴻﨑さん)

それでもどうしても眠くて起きていられない場合、時間が許されるのであれば30分以内の仮眠がよいとも。

「30分以内の仮眠はその後のスポーツパフォーマンスにプラスの影響をもたらすといった報告があり、筋トレでも同様のことがいえる可能性があります。ただし30分以上の長時間の仮眠はパフォーマンスが低下傾向にあるといった報告もあります」(鴻﨑さん)

では、朝の筋トレやスキマ時間での筋トレなど、すぐあとに仕事や予定があり仮眠できないという場合の対処法はあるのでしょうか。

筋トレ後の眠気にはどう対処したらいい?

カフェインを含むコーヒーやお茶を飲むといった、いわゆる一般的な眠気覚ましも有効ですが、眠気を引き起こす原因のうち、不足を補ってあげることで対処できるものもあります。

血糖値の低下には=筋トレ後にチョコレートなどで糖分を摂取する。

急激な体温の低下を抑えるには=筋トレが終ったらストレッチなどでクールダウンして徐々に体温を下げるようにします。

大量にかいた汗も体温を奪うので、ひと休みする前にシャワーを浴びるか、すぐに汗を拭いて着替えをします。

しかし、これら対処法にも注意が必要と鴻﨑さん。

「カフェインやチョコレートなどの補食を大量に摂取してしまうと、血糖値の急上昇に伴うインスリンの過剰分泌などで眠気をさらに誘発する可能性もあるので、摂取量に気をつけましょう。また筋トレ直後に長時間入浴すると血圧が急上昇することもあるので、シャワーのみとすることがオススメです」(鴻﨑さん)

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さらに、筋トレ後の予定まで少し時間的に余裕があるなら食事を摂ってエネルギー補給をしたり、15〜30分程度の仮眠をとるのも、もちろん有効とのことです。

続いて、筋トレ前にできる3つの眠気対策です。

筋トレ前にできる3つの眠気対策

眠くなってしまってからの対策より、できれば事前にできる予防策があるに越したことはありませんよね。いくつかご紹介しましょう。

【1】軽めの筋トレメニューで

一気にやるより、コツコツ継続していくことも筋トレのテーマ。毎回ハードである必要はない。ガッツリ追い込むのは筋トレ後や翌日に予定のない休日前に心置きなく

【2】糖分やタンパク質を摂取しておく

筋トレ前に糖分やタンパク質をチャージしておくのも手。鶏ササミと野菜のスープやバナナ、チョコレート、チーズなどお腹にたまらないメニューで

CHECK:空腹状態でのトレーニングは筋肉にもよくない

空腹感を抱えてのトレーニングは、血糖値が下がっている状態での運動になります。当然エネルギーが不足しているので筋肉や肝臓に蓄えられているエネルギーを活用することになりますが、血糖値が低いので糖新生を起こすことにもつながり、筋肉の異化作用も進むと考えられます。あまりおすすめはしません。

せめて30分前でも、糖質やアミノ酸を適量摂取するのがよいでしょう。消化のよいドリンクタイプやゼリータイプであれば、20分もすれば血糖やアミノ酸濃度を上昇させてくれます。

また、コンビニのオニギリや固形のエネルギーバーなどでもよいかと思います。脂質や肉類などは、運動中は消化器官に血液があまり回らず、消化吸収が間に合わない可能性が高いので避けたほうがよいでしょう。

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【3】カフェインを摂取しておく

コーヒーなどに含まれるカフェインは眠気を覚ますだけでなく、集中力も高めてくれる。トップアスリートでも、まずお茶やコーヒーなどでカフェインを摂取してから試合に望む選手も。

しかし、利尿作用によって余計な水分を対外に排出してしまうため、たくさん飲むのはNG。お茶はトレーニング中の水分補給にも適さない

CHECK:カフェインはトレーニングに有効なのか?

カフェインは、おもに持久的な運動能力を向上させます。脳の興奮水準を高め、長時間運動時の疲労を軽減、パフォーマンスアップにひと役買ってくれます。また、運動中の脂肪利用を促進し、糖質(グリコーゲン)の枯渇を予防し、運動持続時間を延長することも知られています。カフェインを摂取するなら運動前がおすすめです。カフェインが脂肪分解酵素を活性化することによって体脂肪の分解や代謝がより促進され、高い脂肪燃焼効果が期待できるからです。

個人差はありますが、摂取・吸収されてから30分~2時間でその効果が現れます。半減期は約4時間といわれていますが、こちらも人によって異なり、2~8時間の幅があります。

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「単純に強度のみで比較すれば高強度トレーニングより低強度トレーニングの方が疲労感は少ないので眠くならない可能性はあります。ただし、低強度であっても長時間行えば当然、疲労による眠気を感じる可能性が考えられます。なのでトレーニング法での眠気予防は、各個人の筋トレを行う目的によっても変わってきますね」(鴻﨑さん)

トレーニング方法そのもので筋トレ後の眠気を予防する方法の「軽めの筋トレメニュー」は、「短時間で」ということも念頭に置いて行いましょう。

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監修者プロフィール

鴻﨑香里奈(こうざき・かりな)

体育科学博士。日本体育大学体育研究所助教授。専門分野は分子運動生理学、運動生化学、スポーツ医学。柔道整復師、日本体育協会公認アスレティックトレーナー(JASA-AT)

<Text:京澤洋子(アート・サプライ)>

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