帝京大、復権の10度目日本一で岩出監督勇退 26年間で超強豪に育て上げた名将に最高の花道

[ 2022年1月10日 05:30 ]

ラグビー第58回全国大学選手権決勝   帝京大27ー14明大 ( 2022年1月9日    東京・国立競技場 )

<帝京大・明大>10回目の大学日本一を決め、歓喜のジャンプをする帝京大フィフティーン(撮影・久冨木 修)         
Photo By スポニチ

 帝京大が27―14で明大を下し、不滅の9連覇を達成した17年度以来、4大会ぶり10度目の優勝を果たした。チャンスをスコアに結び付けるバックスの決定力に加え、FWは相手の代名詞でもあるスクラムで圧倒。96年に就任し、新興校を大学ラグビー界一の強豪に育て上げた岩出雅之監督(63)は、明大の故北島忠治監督の11度に次ぐ、10度目のタイトル獲得。試合後、今年度での退任を発表した。

 これが最後。岩出監督は試合前、限られた人だけに退任を伝え、臨んだ11度目の決勝の舞台。ロッカーでは「やっぱりラグビーはタックルだ」と指示し、ゲームテーマとして「徹」を授けた。手塩にかけた選手は、それを80分間体現。名将は国立の大空に10度舞った。

 「連覇には連覇のいいところがあったが、今年のチームは一度負けたところから上がった分、よりタフなチームだった。こういう結果を与えてくれて、みんなで喜びたい」

 準決勝の京産大戦では気持ちに甘さがあり、前半をリードされた。この1週間は防御面の整備に特化して練習。試合の大勢が決まった後半に2トライを許したものの、前半は完封。激しいタックルを象徴するように、ターンオーバーも前半だけで5回。「スコア上は大きな(差がある)試合ではないが、安定したゲーム運びをしてくれた」と選手をねぎらった。

 「連覇が止まり、そこから上がるのは正直、簡単ではなかった」。18年度の準決勝で敗れ、連覇がストップ。岩出監督自身は「連覇中に起きていた問題や隙もあった」と変革の好機と捉えたが過渡期には指揮官自ら「僕のミス」と振り返る試合もあった。翌19年度の大学選手権は初戦の3回戦で敗退。直前の調整方法を誤り、試合でパフォーマンスが低下した。だから「負けて卒業した4年生の思いもある」。今季は「僕の介入を少なくし、リーダーを増やした」と学生主体のチームづくりを進めた。

 “低迷期”の3年間をプロップ細木主将は「ろくな人間ではなかった」と振り返る。自分と向き合うことができず、練習態度は緩慢。そんな時でも「監督は寄り添ってくれた」といい、改心して希代の主将に成長した。3番としてもスクラムで5度の相手ペナルティーを誘発。ノーサイドの瞬間は、膝から崩れ落ちて感極まった。

 「一番いい時に渡せる」と26年間の監督生活に終止符を打ち、後任には元日本代表のOBで現FWコーチの相馬朋和氏(44)が就く見通し。伝統校支配の大学ラグビー界に風穴をあけた改革者が第一線を退く。

続きを表示

2022年1月10日のニュース