脱サラして新規参入チームの社長兼監督に―Tリーグ九州をゼロから立ち上げた男の物語

[ 2021年9月10日 15:28 ]

Tリーグ九州の川面創監督
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 Tリーグ唯一の球団社長兼監督の戦いがいよいよ始まる。10日午後6時開始の女子開幕戦で、新規参入の九州を率いる川面創(はじめ)監督が3連覇中の日本生命に挑む。一国一城の主になってから、目が回るような慌ただしい毎日を過ごしてきた。突き動かしたのは、卓球への情熱。その一言に尽きる。

 実業団で競技生活を終えたあと、企業をやめて、母校・立命大の職員になった。女子卓球部の監督にも就任。関西学生リーグを6度制覇した実績が光るが、“本業”だけに力を注いできたわけではない。卓球台の寄贈事業、指導者の派遣事業、子どもの卓球教室開催など、競技の普及にも生活の多くの時間を割いた。

 あふれんばかりの卓球愛を源流とする活動は、結果的に多くの人との出会いを生んだ。配った名刺は、企業人、実業家など多岐にわたった。男子・琉球の早川周作社長もその1人。膝をつき合わせて語り合ううちに、新チームの構想も生まれた。現役時代、読みの鋭さに定評があった川面さんは、ここが勝負どころだと感じだ。「卓球界の発展のために働きたい」。家族を抱える身ながら、44歳の今春、大学職員という安定した職業をやめて、「九州アスティーダ」に移る決心をした。社長に就任した。

 脱サラして旗揚げをしたチームは、企業の後ろ盾がないクラブチーム。福岡市を拠点としながら、Tリーグ未開の地、九州全土に根を張るべく、各地を回って支援、応援を仰いだ。これまで訪問した会社、地方自治体は、300社近い。オンラインを含めれば、軽く500社を超える。お互いがウインウインになるように、アイデアをひねって、資金、協力を集めた。

 選手獲得もゼロから始まった。人脈を生かし、カット型の名手、佐藤瞳と橋本帆乃香を獲得。Tリーグに選手を派遣していなかったミキハウスから、協力を引き出した。韓国のホープで東京五輪に出場した申裕斌(シンユビン)との契約にも成功。参戦1年目から戦える態勢をつくった。

 監督にも就き、コートの中で開幕戦を迎える。相手の日本生命を率いる村上恭和総監督には、学生時代からお世話になった。戦術、技術だけでなく、社会人としてのあり方も教わった恩師のような人でだ。ジュニア支援の事業も一緒にたずさわった。師弟対決から川面監督のサクセスストーリーが始まる。(倉世古 洋平)

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2021年9月10日のニュース