東京パラリンピック総括“片翼の世界”変化担うきっかけに、2度目の開催国 競技面は成功

[ 2021年9月6日 06:00 ]

パラリンピック閉会式が終わり、記念撮影する日本代表選手たち(撮影・木村 揚輔)
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 東京パラリンピックは5日、閉幕した。新型コロナウイルスの影響で1年延期となり、緊急事態宣言下で原則無観客の開催。世界から集まった約4400人のアスリートは障がいを乗り越え、世界に何を訴えたのか。パラリンピック取材班キャップの東信人専門委員が総括した。

 史上最多254人の選手団を送り込んだ日本は、競技初日に競泳女子で14歳の山田美幸が日本人最年少メダリストとなる2位に食い込み、多くの選手が表彰台に続いた。金13、銀15、銅23。海外の選手も含めてハンデをものともせず、驚異的なパフォーマンスを見せたアスリートの姿や言葉は感動を生んだ。新型コロナウイルスの影響で制限を受けた中、競技面は成功と言ってもいいのではないか。

 競技の公平性に関する問題では陸上男子車いすT52で期待された伊藤智也が涙をのんだ。大会前のクラス分けで障がいが軽いT53に変更されて予選敗退。コロナ禍でクラス分けの機会となる大会が見送られ、出場資格を逃した選手もいる。不明瞭な審査基準を疑問視する声もあり、障がいを重く装うケースもあると聞く。不公平感が拭えなければ大会の信頼性は傷つきかねない。基準再検討の方針を明らかにしている国際パラリンピック委員会(IPC)は早急な取り組みが必要だろう。

 多くの選手は「パラがきっかけになれば」と訴えた。大会が掲げる障がい者と健常者の区別がない、多様性を認め合う「共生社会の実現」のために。そんな声が繰り返し上がったのは、日常生活における支援や理解の不足が大きいと感じているからにほかならない。

 競泳男子の富田宇宙は400メートル自由形で銀メダルを獲得し「一生に一度の大舞台で多様性の価値とか、障がい者の理解につながるようなパフォーマンスとしてメダルを獲る姿を見せられた。障がいを負った意味が、この瞬間にあったのかな」と声を詰まらせた。望んで全盲になったわけではない人間が、そんな使命感を背負い込んでしまうほど、世界は未成熟で不自由なのだと感じずにはいられなかった。

 問題は今、そこにある現実は受け入れた上で、どう未来を変えていくのか。祝祭ムードが強い五輪と比べ、パラリンピックは課題を突きつけてくる。ホストに選ばれた時点で開催地にとどまらず、開催国としての覚悟を問われる大会だった。競技に出場していなくても、会場で観戦していなくても、日本国民全体が“参加者”であったことを自覚し、変化の担い手にならなくては、世界で初めて2度目の開催国となった意味はないのではないか。

 東京パラリンピックは成功したのか。本当の答えが出るには時間がかかる。我々にできるのは相手の立場になって想像力を働かせ、ささやかな一歩を踏み出すぐらいのことしかないのだとしても、そこに思いを巡らせる。それがアスリートの求めた「きっかけ」なのだ、と。そう思った。(スポーツ部専門委員)

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