競泳男子100バタ・木村号泣 4大会目で悲願金メダル!米修業結実、君が代聞き「特別な時間」

[ 2021年9月4日 05:30 ]

東京パラリンピック第11日・競泳 ( 2021年9月4日    東京アクアティクスセンター )

金メダルを獲得し涙の木村(左)(撮影・光山 貴大)
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 競泳の男子100メートルバタフライ(視覚障がいS11)で4大会連続出場の木村敬一(30=東京ガス)が1分2秒57で泳ぎ、自身初の金メダルに輝いた。2位だった100メートル平泳ぎに続いて今大会2個目、通算8個目のメダル獲得となった。富田宇宙(32=日体大大学院)も2位に入り、今大会3度目の表彰台に上がった。

 タッチ板に触ってゴーグルを外す。「バテた。駄目かも」。予選よりも遅い。それでもゴールのタイミングを棒で知らせるタッパー寺西真人さん(62)の声が木村に届いた。「金メダルおめでとう」。日本人ワンツーを実現させた2位の富田にも祝福され、コースロープ越しに抱き合った。

 「この日のために頑張ってきた。この日って本当に来るんだな。いろんなことがあって、この日が来ないんじゃないかなって思っていたこともあるんで」

 3度目の出場だった16年リオデジャネイロ大会は5種目で銀2、銅2のメダルを獲得しながら「あれだけ努力しても勝てないのか」と涙した。18年4月から米国で活動。当初は英語も話せなかった。食堂でメニューが分からず、口に入れて注文品を知った。「生きるだけでくたくた」と漏らす環境。そこで対応力を育み「自己肯定感が付いた」と話す。コロナ禍で20年3月に帰国したが、自分自身を信じた。今大会は体力温存で「金に届かない種目はなくても」と初めて出場を3種目に絞った。2種目は「ステップ」。最後のバタフライに全てを懸けた。

 表彰式で君が代が鳴った。「それは特別な時間で僕が唯一金メダルを獲ったと認識できる時間。我慢しなくてもいいかも」。見えない瞳に涙があふれた。

 滋賀育ちの木村は2歳で全盲になり、盲学校の小学部1年から寄宿舎に入った。開かれた環境を求めて中学から東京へ。米国行きを決めた際に母・正美さん(60)は「どこまで遠くに行くのか」と寂しさを募らせたという。6歳で親元を離れて続けてきた長い旅が、一つのゴールを迎えた。

 ◇木村 敬一(きむら・けいいち)1990年(平2)9月11日生まれ、滋賀県出身の30歳。増殖性硝子体網膜症のため2歳で視力を失う。小学4年から水泳を始め中学で競技開始。日大を経て東京ガス所属。パラリンピックは08年北京から4大会連続出場。12年ロンドンで銀1、銅1、16年リオで銀2、銅2のメダルを獲得した。1メートル71、67キロ。

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