芸術的ディフェンスで男子バスケ初の決勝進出!元Jリーガー京谷HC、王者・米国に「真っ向勝負」

[ 2021年9月3日 23:51 ]

東京パラリンピック第11日 車いすバスケットボール男子準決勝   日本79―68(前半33―36)英国 ( 2021年9月3日    有明アリーナ )

英国を破って決勝進出を決め、涙ぐむ藤本(左端)と喜ぶ男子日本代表の選手たち
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 男子の日本が初進出の準決勝で2018年世界選手権優勝の英国に逆転勝ちし、銀メダル以上を確定させるとともに初の決勝進出を果たした。男子の車いすバスケットボールがパラリンピックでメダルを獲得するのは通算12回目の出場で初めてとなった。

 試合終了のブザーが鳴る前から、5度目のパラ出場となった藤本怜央(37)は涙を流していた。元Jリーガーの京谷和幸ヘッドコーチ(50)から「気を緩めるんじゃねえ」と声が飛んだが、チームを苦しい時期を引っ張ってきた大黒柱の涙が快挙を物語った。

 「パラリンピックは本当に特別な場なので。ほんの一握りの人間しか幸せをつかめない場、ほとんどの人間が苦しい思いだけして報われないと思っていた場所で、報われる側に入ったと。長い時間を日の丸を背負って過ごして、東京という場で報われたというのは、神様が最後に救ってくれたのかなと思ってます」

 その藤本が胸を張る「日本の芸術的なディフェンス」が、この日も勝因だった。立ち上がりは英国にパスを回され、ゴール下で待ち構える得点源のマニングにボールを入れられ、第1Q途中では10点差をつけられた。だが、京谷ヘッドコーチは第2Q開始から赤石竜我(20)と香西宏昭(33)を投入し、コート上の5人がフラットなラインをつくって高い位置からプレスをかけるディフェンスに切り替えた。激しく当たるだけではなく、フェイクの動きを入れるなど相手のパスコースを封じ、サイドラインの選手が逆サイドまでチェックする緻密な連携で、英国をボールを敵陣へ運ぶだけで精いっぱいの状態に追い込んだ。赤石は1対1でも負けない激しい当たりでマニングを抑えるMVP級の活躍。「自分が投入されるのはディフェンスを強くしたい時。リードされている展開で流れを変えるのは、自分が理想としている展開だった」と胸を張った。

 5日の決勝では2連覇を狙う米国と対戦する。「いつもどおりディフェンスで勝とう」と選手を送り出し、得意の展開で逆転勝ちを収めた京谷ヘッドコーチは「米国には一度も勝ったことがないが、今の日本がどれだけ通用するか真っ向勝負する。やるか、やられるかの勝負になる」と抱負を述べた。藤本は“史上最強”と称されるチームについて聞かれ「僕の想像は超えている。でも、不思議なことにまだ物足りない。終わりが見えていない」と表現した。五輪の女子日本代表も届かなかった世界の頂点へ、物足りなさの原因であろう“伸びしろ”をぶつけるだけだ。

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