萩野公介 取材エリアで感涙「金メダルはこれっぽっち。今回は一番幸せな五輪だった」

[ 2021年7月30日 13:00 ]

東京五輪第8日 競泳男子200メートル個人メドレー決勝 ( 2021年7月30日    東京アクアティクスセンター )

<東京五輪・競泳>男子200メートル個人メドレー決勝、レースを終え健闘を称え合う瀬戸大也(左)と萩野公介(撮影・小海途 良幹)
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 男子200メートル個人メドレー決勝で、萩野公介(26=ブリヂストン)は1分57秒49の6位に終わった。メダルを獲得できず、1位とは2秒49差。それでも瀬戸大也と同様に、レース後は笑顔、笑顔で振り返ったが、取材エリアでは、感極まって涙を流す場面もあった。

 「僕自身はこの五輪が一番幸せだったと思う。ロンドン、リオはメダルを獲った。今回は順位は悪いけど、一番幸せな五輪だった。結果にこだわっている人から見たら“何言ってるんだよ”となるかもしれないけど、僕自身はそうは思わない。そういうことにとらわれて、前ばかり見て、しんどいなと思った時に後ろを見たら応援してくれる人がたくさんいてくれた」

 率直な思いが口から出た。盟友の瀬戸と競えたこともあった。さらに心を揺さぶったのが、仲間の存在であり、応援してくれた方々への感謝だ。特に平井伯昌コーチ(58)には感謝の気持ちしかない。この日はウオーミングアップから指導してもらい、「1つ1つ思い返していくと、いい1日だったと思う」と振り返る。「開放しろ。身も心開放して、自分の泳ぎたいように泳げ」との助言をもらい、「平泳ぎでいきたい」と自ら意見を伝えると、「その作戦はいいな」と返してもらったという。

 「平井先生をはじめ、後ろには本当にたくさんの人がいることに気づけた。言葉悪いかもしれないけど、金メダルは本当にこれっぽっちのもののように感じて。たくさん大切なものをもらえたと感じられて…」と話すと、涙があふれ出た。言葉に詰まりながらも、さらに「水泳続けていて本当に良かったなと思います」と話した。

 800メートルリレーは低調なタイムで予選敗退。心身ともに負担の大きい400メートル個人メドレーを諦め、個人種目は一本に絞った。16年リオ五輪個人メドレーの400メートルで金、200メートルで銀を獲得した王者とは思えないほど苦しんだ。それでも、試合後は充実感を見せていたが、取材エリアでは心の中の思いがあふれ出たようだ。

 【リオ五輪後の萩野公介の苦闘】
 ▼16年8月 リオデジャネイロ五輪の400メートル個人メドレーで金、200メートル個人メドレーで銀、800メートルリレー銅メダルを獲得。
 ▼同9月 15年6月に骨折していた右肘の手術を受ける。
 ▼17年1月 東洋大卒業を前に、ブリヂストンと22年3月まで5年契約を結ぶ。
 ▼17年7月 世界選手権ブダペスト大会に出場。個人メドレーは200メートルで銀、400メートルは6位に沈む。
 ▼18年8月 パンパシフィック選手権で個人メドレーは200メートルで銅、400メートルで銀。連戦となったジャカルタ・アジア大会は個人3種目で銀2、銅1と金メダルなし。
 ▼19年2月 コナミオープン400メートル個人メドレー予選で自己ベストより17秒以上も遅いタイムに沈み決勝を棄権。大会後に予定していたスペイン高地合宿を回避。
 ▼同3月 日本選手権欠場を発表。モチベーション低下などを理由に休養期間に入る。
 ▼同8月 W杯東京大会で半年ぶりのレース復帰。
 ▼同9月 シンガー・ソングライターmiwaとの結婚を発表。
 ▼20年1月 北島杯の200メートル自由形決勝で最下位に終わる。大会直前に体調を崩しており、400メートル個人メドレーを欠場。
 ▼21年4月 日本選手権の200メートル個人メドレーで2位になり、五輪代表に内定。心身ともに負担の大きい400メートル個人メドレーにはエントリーしなかった。

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