宇津木妙子氏占う 投手の疲労度高い硬いマウンド 継投が鍵

[ 2021年7月21日 05:30 ]

日本ソフトボール協会の宇津木妙子副会長
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 追加競技として五輪の舞台に帰ってきたソフトボールはきょう、日本―オーストラリア戦で開幕する。前例なき無観客舞台の先陣を切る日本は、大会連覇が最高にして唯一の目標。元日本代表監督で、世界野球ソフトボール連盟の副会長も務める宇津木妙子さんが、開幕戦とその後の日本の戦いを占った。

 オーストラリアは平均年齢が30歳を超えており、ベテランが多い印象だ。中心となると考えるのは打者ならポーター、投手ならパーナビーという日本リーグで活躍している選手。ポーターは勝負強く、外角に強い。一方でライズ(浮き上がるボール)に弱点があり、そこをうまくつけるかがポイントになる。パーナビーは近年、日本リーグで打ち込まれるケースがあり、日本の各打者は自信を持っているかもしれないが、国の代表となったときに一変する可能性はある。安易に考えるのが一番怖いと思う。

 日本の戦いの中心となるのはやはり投手陣だ。上野と藤田はともに力のあるボールを投げる右腕だが、実はタイプは異なる。息を吐き出して投げる上野は、ボールリリース時に猫背になる。藤田は逆に胸を張ってリリースする。ピッチングスタイルもドロップ中心の「下系」が上野で、突き上げてくるような直球の藤田が「上系」。ここに球速も十分ある左腕の後藤が加わり、各国の対応は難しいと思う。

 1次リーグ5試合に決勝1試合という短期決戦だが、気になるのは疲労度だ。96年アトランタから採用されたソフトボールで、人工芝の球場を使用するのは今回が初。特に福島のマウンドは硬く、投手の疲労度は高い。ページシステムでないため、1次Lで2位以内に入らないと金メダルの可能性はなくなる。緊張感も含めて、継投がポイントとなるだろう。

 打線で注目したいのは川畑だ。小技も効くが思い切りも良く、外角のボールを左中間スタンドまで運べる左打者。日本の元気印として声でチームを引っ張る原田や、淡々と堅実なプレーをする渥美らにも注目してほしい。故障を抱えている山本は一発で試合を決めるパンチ力がある。そして、北京で金メダルの立役者となった山田主将。金メダルの呪縛にとらわれず、開き直ってがむしゃらにプレーしてほしい。

 そして、日本伝統の堅実な守備にも触れたい。前述したように人工芝は打球が速く、足腰にも相当な負担がかかる。内外野ともに守れる市口のようなユーティリティープレーヤーをうまく活用しつつ、最後までコンディションを保つことが重要だろう。

 私が最後に率いた04年アテネ五輪前はSARSの影響で国際試合が不足した苦い思いがある。奇しくも、初戦はオーストラリア戦で、逆転負けを喫してリズムをつかむことができなかった。そのリベンジの思いを、今回のチームに託したい。

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