B・バレットは黒衣の10番を取り戻せるか 吟味される日本での1シーズン

[ 2021年6月22日 12:02 ]

サントリーの一員としてプレーしたボーデン・バレット
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 6月21日、各国代表の掉尾を飾る形で、オールブラックスの今夏スコッド36人が発表された。会見は現地ではゴールデンタイムの午後7時からテレビで生中継されるのだから、19年W杯は3連覇を逃そうが、昨年はアルゼンチンに史上初めて負けようが、いかにラグビーが国民や国そのものに根付いているかがよく分かる。日本では本人や所属チームに事前通達があるのが通例だが、王国ではそうではないらしい。中継で自分の名前が呼ばれ、感極まる初選出選手の様子は、改めてオールブラックスの重みを思い知る一コマだ。

 サバティカル(長期休暇制度)を利用し、今季のトップリーグでサントリーの一員としてプレーしたボーデン・バレットも、まずは無事に選出された。ポジションはバレット本人も望んでいる「インサイドバックス」、つまりはSOにカテゴライズされている。もちろんそこには、19年W杯で10番を背負ったリッチー・モウンガの名前もある。

 今年1月、東京都内で行われた入団会見でバレットが口にしたのが、10番への強いこだわりだった。「一番プレーしたいポジションはSO。2年間は15番でプレーしていたので、10番としてSHやCTBとのコンビネーションを磨きたい」。サントリーでは試合途中からFBに入ることもあったが、先発試合では全て10番を背負った。そのプレーぶりは、さすが16、17年の世界最優秀選手と思わせるものだった。だが、それはあくまで日本での評価。本国では厳しい見方をされているのが、現在のバレットの立ち位置だ。

 ニュージーランドメディアはもちろん、欧州のラグビーメディアも王国の10番争いを幾度となく取り上げているが、大抵は今季のスーパーラグビー・アオテアロアでクルセーダーズを優勝に導いたモウンガこそ黒衣の10番に相応しいという論調。中でもかつて日本代表のヘッドコーチも務めたジョン・カーワン氏はバレットに対して辛辣(しんらつ)で、4月にはニュージーランド・ヘラルド(電子版)で「22番を着るべき」と先発落ちまで主張している。その裏にあるのが、いくらバレットが活躍しようと、それはあくまで日本のリーグに過ぎない、というもの。ちなみに15番には、ハリケーンズで活躍した弟のジョーディー・バレットを推している。

 日本のラグビーファン、とりわけトップリーグを愛する人たちにとっては、なかなか心穏やかには受け止められない主張だろう。私自身、トップリーグがスーパーラグビーのレベルと比肩するとは思っていない。バレット自身はシーズン終了後の年間表彰式で「上位6~8チームはスーパーラグビ―と同じレベルにあると思う」と話したが、多く見積もっても6チームくらいだろう。だがバレットの日本での経験が、全く無駄であったとも思ってはいない。

 確かに上位勢との対戦やプレーオフを除けば、試合の強度やバレット自身に掛かるプレッシャーはスーパーラグビーには及ばない。ただ10番という駒を動かすポジションで過ごした1シーズンは、バレットの思考力を鍛えたのではないか。いわんやチーム合流から短い期間で違う言語を話す同僚たちとコミュニケーションを図り、選手としての特徴をつかみ、初めて対戦する相手チームをスカウティングするといった一連の作業は、プラスになるこそすれマイナスになることはない。

 オールブラックスの7月のテストマッチ予定はトンガ、フィジーとの計3試合。その後、8~10月にはブレディスロー杯とチャンピオンシップ計7試合を控える。W杯に続き昨年もモウンガを10番のファーストチョイスとして起用したイアン・フォスター・ヘッドコーチの構想に現時点では変更はないだろうが、バレットにも何試合か、10番を背負う機会が巡ってくるはず。その時、序列を覆すパフォーマンスを発揮できるかどうか。JKの鼻を明かすプレーを、トップリーグで1シーズン過ごしたからこその進化を見てみたい。(記者コラム・阿部 令)

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