レスリング高橋侑希 家族とともに手にした初の五輪切符「背中を押してくれた」

[ 2021年6月12日 15:08 ]

レスリングフリースタイル57キロ級代表決定プレーオフ ( 2021年6月12日    東京・味の素ナショナルトレーニングセンター )

東京五輪代表を決めた高橋侑。家族の寄せ書きが入ったハンカチを力に変えた(日本レスリング協会提供)
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 17年世界王者で5月の世界最終予選で五輪出場枠を獲得した高橋侑希(27=山梨学院大職)が16年リオデジャネイロ五輪銀メダルの樋口黎(25=ミキハウス)を4―2で下し、初の五輪代表に内定した。

 高橋は相手の消極的姿勢により2点をリード。第2ピリオドでバックを取られて2失点したが、残り約1分でタックルに入られたところで相手の体を返して2点を追加。試合終了の数秒前に勝利を確信し、大きく手を叩いた。「(失点しても)負けはしないと思っていた。自分のペースで攻めるプランが思い通りにいった」と振り返り、念願の五輪切符に「ホッとしたのが正直なところ。僕が(世界最終予選で)取ってきた切符なので当然でしょという感覚だったので、うれしいですけど、やっとスタートラインに立てたって感じの方が大きい」と胸をなで下ろした。

 メダル獲得で東京五輪代表が決まるはずだった19年世界選手権はまさかの4回戦敗退。同年12月の五輪予選代表を決める全日本選手権も決勝で樋口に敗れた。ここまでは、16年リオデジャネイロ五輪前の15年と同じ道をたどっていた。ミスを繰り返したかに見えたが、今回は違った。4月のアジア五輪予選で樋口が痛恨の計量失格。高橋は出場権が巡ってきた世界最終予選で1位となって出場枠を獲得し、この日の樋口との直接対決も制した。「リオで失敗して6年越し。同じ感じでここまで来ちゃったけど、最後にチャンスをものにできたのは諦めなくて良かった」と感慨深げに語った。

 勝利を真っ先に伝えたのは元レスリング選手で同い年の妻・早耶架さんだ。一度は自力での五輪出場を逃し、昨年は新型コロナも重なって練習に身が入らなかった時期もあったが「妻にも情けないけど“どうしたら良いんだろう”という話をした。妻は強制するわけでもなく気持ちの部分で支えてくれて、僕は気付いたら体重調整して気付いたら練習していた感じ」と妻の計らいが自然とマットに足を運ばせてくれた。今回のプレーオフ前日には家族と寄せ書きをした試合に携帯するハンカチを手渡され、妻からは「自分を信じていつも通り!!侑希は強い!!大丈夫 今日はきっといい日になる」とメッセージが記されていた。「背中を押してくれた。本当に家族がいないと乗り越えられなかった部分もあるので本当にありがとうって伝えたいです」。シングレットの中のハンカチが力をくれた。

 念願の五輪切符を獲得し、目指すは本番での金メダル。「1カ月半しかないのでギアを上げてやっていきたい。出場できる、できないの壁があって、メダルの壁、金メダルの壁がある。一つ一つ壁を打ち破っていきたい。金メダルしか見えていないです」と力強く宣言した。

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2021年6月12日のニュース