【橋本聖子会長×二宮清純氏特別対談(5)】30年札幌五輪の招致「有利にしたい」

[ 2021年3月22日 08:39 ]

対談する東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本会長と二宮清純氏(撮影・会津 智海)
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 二宮 橋本会長は以前から「五輪は人類共通の文化だ。世界の文化交流だ」と語っています。世界選手権はチャンピオンを決める大会ですが、五輪は別なんだと。今回はこれまでの五輪の理念は残念ながら実現できにくい。そこにジレンマを感じることはないですか。

 橋本 今回のコロナにおいて、スタイルはガラッと変わったと思います。社会も変わった。いくら五輪期間中の混雑解消のためにテレワークにしましょうと言っても、なかなかできなかったのに、このコロナで一気にテレワークは進んだ。全く違った視点で五輪を考えたとしたら、新しいやり方があると思います。

 二宮 会長は北海道の出身です。札幌市は2030年冬季五輪の招致を目指している(注5)。東京五輪を成功させれば、日本の評価も高くなる。招致に有利になるという考えはありますか。

 橋本 有利にしたいですね。そこには大きな望みを持っています。

 二宮 ご著書の中に「死点」という言葉がありました。「レース中や練習中に死点という言葉を使うことがあります。ある地点を越えると、死んでしまうのではなく、死にそうに苦しかった状態から生き返る」と。東京五輪は死点を越えましたか。

 橋本 もう生き返ってますよね(笑い)。私は病気との闘いをずっとしてきました。小学3年生の時に「急性腎炎」だと言われて入院して、高校生になったら再発して、実は「慢性腎炎」だと言われて、ショックでPTSD(心的外傷後ストレス障害)になりました。ストレスで呼吸筋不全にもなって、深呼吸は今もできない。そして医療事故があって、B型肝炎にも感染している。その時に病気と闘うことを諦めました。自分の中に受け入れて一緒に取り組んでいこうと思った瞬間から強くなりだしました。1年半後の五輪にぎりぎり間に合ったんです。言い方が難しいのですが、私は(競泳で白血病から復活を目指す)池江璃花子さんの気持ちがよく分かります。彼女はとてつもなく強い人間になって帰ってくるんだろうと思います。

 (注5)JOCが30年冬季五輪・パラリンピックの開催に関心のある都市を募り、唯一意思表明した札幌市が20年1月に国内候補地に決定。72年以来2度目の開催を目指す。ピレネー・バルセロナ(スペイン)、ソルトレークシティー(米国)、バンクーバー(カナダ)も開催に関心を示している。

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2021年3月22日のニュース