柔道男子66キロ級“歴史的”代表決定戦!丸山VS一二三、注目の一戦3つのポイント

[ 2020年12月13日 06:00 ]

阿部一二三(右)と丸山城志郎
Photo By スポニチ

 柔道の東京五輪男子66キロ級代表決定戦は13日、東京都文京区の講道館で開催される。19年世界選手権覇者の丸山城志郎(27=ミキハウス)と同17、18年連覇の阿部一二三(23=パーク24)の直接対決による、日本柔道界史上初のワンマッチによる五輪代表決定戦。注目の一戦の見どころを、本紙評論家の上水研一朗氏(46=東海大体育学部武道学科教授、男子柔道部監督)が解説した。

 まず今回の決定戦が「世紀の一戦」であることを強調したい。超一流の2人が、たった一つの五輪代表枠を争って1試合だけを行うようなことは、後にも先にもないだろう。両選手には想像を絶する重圧がかかっていると思われる。その試合を見るにあたって3つのポイントを挙げたい。

 【(1)試合勘】
 どんなに超一流の選手でも、試合勘だけは試合を積まなければ取り戻せず、稽古だけでは補えない。丸山は昨年11月のグランドスラム(GS)大阪大会から1年1カ月、阿部は今年2月のGSデュッセルドルフ大会から10カ月、実戦から離れている。両者の3カ月差は意外に大きく、この点は阿部が有利だろう。しかし両者ともに夏までは十分な稽古ができておらず、試合勘も戻らない中では、月並みではあるが、最後はいかに腹をくくれるかが大事になると思われる。

 【(2)準備】
 初戦から決勝に向けて、試合を重ねて仕上げられる通常の大会と違い、今回はいきなり“決勝”。体のつくり方、ウオーミングアップを含めたシミュレーションを重ねるなど、全てを想定した準備をしてきたかが2つ目のポイントだ。両者とも、エンジンの掛かりは遅いタイプ。通常の大会とは全く違うため、これまでの経験は生きない。未知の領域で、いきなりトップギアに入れられるかが鍵になるだろう。

 【(3)技術】
 3つ目のポイントは、丸山の左釣り手を阿部が徹底して殺せるかだろう。徹底できれば阿部、殺せなかったら丸山に勝機が広がるとみる。自分の強みをぶつけるよりも、いかに相手の良さを消せるかも見どころで、そのための準備をしてきたかも注目したい。

 主審を務めるのは天野安喜子氏。国際試合の経験が豊富で、あえて投げての決着を求めるような、むやみに試合時間を長くすることもないだろう。互いに様子見をすれば、すぐに指導が入る。両者には駆け引きよりも、いかに先手を打つかを重点に置いて試合に臨んでほしい。(東海大体育学部武道学科教授、男子柔道部監督)

 ▽男子66キロ級の東京五輪代表争い 当初は17、18年の世界選手権を2連覇した阿部が独走。2番手の丸山は18年アジア大会で優勝を逃し(準優勝)大きく遅れを取ったが、同年のGS大阪大会決勝で丸山が勝利。丸山はさらに国際大会を2連勝して19年4月の選抜体重別に臨み、決勝で再び阿部を破って優勝。同年8月の世界選手権でも準決勝で阿部を破って初優勝を飾り、代表争いで逆転した。同年11月のGS大阪大会で丸山が優勝すれば五輪代表に内定する可能性が高かったが、今度は決勝で阿部が一矢報いて優勝。ともに出場する予定だった今年2月のGSデュッセルドルフ大会は丸山が欠場し、阿部が優勝。4月の選抜体重別、今月のGS東京大会がコロナ禍で中止となったため、両者の争いは一騎打ちの日を迎えた。

 ▽ワンマッチによる五輪代表決定戦 全日本柔道連盟によれば、柔道におけるワンマッチ決定戦は史上初めて。他競技ではレスリングで複数例があり、今年3月には東京五輪代表を懸けて決定戦2試合が行われ、土性沙羅、乙黒圭祐がそれぞれ代表の座を射止めた。

続きを表示

この記事のフォト

2020年12月13日のニュース