【Road To 甲子園ボウル(1)】コロナ禍の中、史上初のトーナメント 1回戦4カードは好試合続出

[ 2020年11月4日 05:30 ]

甲子園ボウル コラム用ロゴ(カラー)
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 当たり前でない日常がフィールドに帰ってきた。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、関西学生アメリカンフットボール1部の秋季公式戦が開幕したのは例年より1カ月半遅い10月17日。史上初のトーナメント方式となり、準決勝まで無観客開催でも、甲子園ボウルを狙うモチベーションに例年との差はない。負ければ終わりの一発勝負。上位校の重圧と緊張感、千載一遇のチャンスに懸ける中堅チャレンジ校の気迫が交差し、1回戦の4カードは好試合が続出した。

 もちろん、不断の努力なしにハイレベルな攻防は実現できない。アメリカンフットボールこそ、コロナ禍の影響を最大限に受けるスポーツの一つだからだ。タックルなどコンタクトプレーが多く、「密接」は必須。部員数が3ケタを超える大学も珍しくなく、「密集」は避けられない。最も大事な戦術面を浸透させようにも、「密閉」した空間はご法度。大学によって練習の状況は違ううえ、最も大事な開幕前に追い込む調整もままならない。あらゆる要素が不透明な中で迎えた2020年シーズン。1回戦をすべてスタンドから観戦した浜田篤則審判部長が不安に対する“回答”を明示した。

 「例年と遜色ないレベルだったので驚いています。QBとRBの息を合わせるプレーとかは時間が必要なので難しいと思っていたけど、それも、できていた。精度が求められるスペシャルプレーもあって、見応えがありました」

 チームや個人の強化に特効薬は存在しない。漢方ともいうべき「時間」を有効に生かした結果だった。神大QBの法貴俊哉(4年)は自粛期間中、ひたすら自宅やジムで体幹を鍛えた。パッサーに必要な体のバランスを手に入れ、近大戦(10月18日)でも正確なパスでオフェンスをけん引。同じくウエートトレを集中的にこなし、ベンチプレスで30キロ以上の上積みを実現したDL杉野太郎主将(4年)とともに準決勝進出の立役者になった。

 立命大の古橋由一郎監督のコメントも興味深い。「コロナで時間の使い方が変わった。ウェブなら、遅い時間でもミーティングなどができる」。ピンチをチャンスに変える創意工夫。それは運営する連盟も同じスタンスだ。「試合ができることに感謝しています」。全8チームの指導者、選手は必ず同じ言葉を口にした。試合開催方式で何度も紛糾した開幕前の理事会。「公式戦中止」の選択肢だけは、一度も議題に上がらなかったという。感謝の思いを胸に、トーナメントは佳境に差しかかっていく。

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