ラグビー“42歳の鉄人”大野 オンライン引退会見で若手台頭に期待“出てこい和製ロック”

[ 2020年5月23日 05:30 ]

「激しさ」を身上に、23年間の現役生活を駆け抜けた大野
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 ラグビー日本代表で歴代最多の98キャップを獲得したロック大野均(42=東芝)が22日、オンラインでの引退会見に臨み、23年間の現役生活に別れを告げた。日大工学部からラグビーを始める異色の経歴ながら、前人未到の記録を打ち立てた鉄人は、プレーでは「激しさ」を一番に追い求めていたと述懐。後進にその魂を引き継ぐとともに、19年W杯では不在だった和製ロックの台頭を期待した。

 本来なら盛大に花道を用意される立場ながら、コロナ禍の影響でオンラインで行われた引退会見。それでも80人以上のメディア関係者が視聴したことが、大野の残した足跡の大きさを証明していた。冒頭で「今年も多くの素晴らしい選手が引退する中、私にこのような場を設けていただき感謝したい」とあいさつ。謙虚な人柄を画面を通じてにじませた。

 引退理由については1年前から悩まされた膝痛が回復しなかったことを挙げ、「W杯での日本代表の躍進や、東芝内でも若い選手の台頭を頼もしく感じ、これ以上選手としてやり残したことはないと思った」と明かした。誰にも相談はせず、自分自身の体と向き合い、TLが中断した3月以降に決断。「私を育んでくれた」と酪農を営む両親に感謝した。

 大学からラグビーを始め「パスもキックも下手くそ」と自嘲する。そんな中でチームに貢献できる方法として、「一番大事にしてきたことは激しさ」だという。激しさを前面に押し出したプレーで仲間の信頼を勝ち取り、大野自身を高みに引き上げた。そしてそれが、ロックというポジションの特性でもある。

 昨年のW杯、日本生まれのロックは不在だった。ラグビーは外国生まれでも代表になれる多様性が魅力だが、和製ロックが台頭してこそ、日本代表のレベルアップにつながる。身長1メートル92と世界では小柄な大野が、15年W杯の南ア戦など数々の名勝負で活躍できたのも激しさゆえ。「日本中の日本人ロックが日本代表として活躍できるのを楽しみにしている」と、魂を引き継ぐ後進の登場を願った。

 将来は指導者を目指しながら、「自分ができること、自分にしかできないことを見つけて、日本ラグビー界に貢献したい」と大野。座右の銘は「灰になっても、まだ燃える」。第二の人生への情熱を、早くもたぎらせた。

 《東芝・薫田GM感慨》入部当時は「ど素人だった」という大野をスカウトした東芝の薫田真広GMは「本人の努力でここまで来た。いろんな夢を見せてくれた選手」とねぎらった。東芝は大野の他にもラグビー経験の少ない選手の獲得に積極的で、「ラグビーの多様性、誰でも生きるポジションがあることを示してくれた」と感謝した。今後については「本人も東芝に恩返ししたいと言ってくれている。一番いい選択をしていきたい」と話した。

 ◆大野 均(おおの・ひとし)1978年(昭53)5月6日生まれ、福島県郡山市出身の42歳。清陵情報高まで野球部に所属し外野手。日大工学部からラグビーを始め、01年4月に東芝入り。04年5月に代表初キャップを獲得し、歴代最多の98キャップ。07、11、15年W杯代表。サンウルブズでも16、17年にプレー。トップリーグ通算170試合出場は歴代2位。1メートル92、105キロ。ポジションはロック。

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