サーフィン国内女王・須田那月 オンラインレッスン開講で“波及効果”東京五輪へレベルアップ

[ 2020年5月23日 05:30 ]

Challenge――新たな挑戦

種子島の自宅でオンラインレッスンを行う須田那月(提供写真)
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 サーフィンの19年日本国内プロ女王の須田那月(24)は、5月からウェブ会議システム「Zoom」を利用したパーソナルオンラインレッスンを始めた。新型コロナウイルスの影響で、国内外のあらゆる大会が中断していることがきっかけだったが、受講者のレベルや課題に合わせた内容で好評を博す。基礎を見つめ直すことで、自身の競技力向上にもつながっているという。

 ◇ステイホームの時間を有効活用
 初のグランドチャンピオンに輝き、意気揚々と臨むはずだった新シーズン。新型コロナの影響で早々と中断に追い込まれ、須田は「モチベーションが上がっていた中で試合がなくなり落ち込んだ」という。だが、波と同様、「状況は私が変えられることじゃない」と吹っ切れると、終わりの見えないステイホーム時間を有効活用することを思い立った。

 これまでもプロサーファーとして大会で各地を回る中、愛好者から「レッスンをしてくれませんか?」と誘われていた。ただ、シーズン中は多忙で不可能。そんな中で世の中の状況は一変し、3月末ごろに「オンラインでできないだろうか?」と思い立った。プロコーチである父・大輔さんのレッスンを手伝った経験はあるものの、自身がメインの講師役となり、ましてや実際に海に入れない状況でのレッスンは未体験。準備に充てた4月の1カ月間は、試行錯誤の繰り返しだった。

 ◇きめ細かな講義・カウンセリング
 手始めに実施した模擬レッスンでいきなりつまずいた。「目の前に生徒さんがいれば、表情や体の動きを見て修正できる。でもオンラインでは画質の問題もあり、相手の表情や動きを読み取るのが難しかった」。どうすれば解決するか。導き出した答えは、感覚や視覚ではなく、言葉で理解してもらえるように教えること。そのために状況別、技別の教え方を整理し、スケッチブックで独自のマニュアルを作成した。

 実際のレッスン前には、生徒のカウンセリングを実施する。どんな課題を抱え、どんなスキルの習得や向上を目指しているのかを把握し、一人一人に適した指導法を整理。比較動画なども逐一、作成し、レッスン後には要点をまとめた資料を渡すアフターフォローも忘れない。「伝え方や話の聞き方、言葉遣いも気に掛けている」という徹底ぶりで、最初の約10日間で、15人の受講者を集める快調なスタートを切った。

 ◇コロナ禍終息後オフシーズンも
 “新米指導者”とは思えない、きめ細かなレッスン。「考え方が深くなった。応用技のレベルアップにもつながる」と、自分自身の競技力向上に手応えを得る、思わぬ副産物もあった。コロナ禍が終息し、プロサーファーとしての活動が再開されればレッスンを終了する予定だが、「オフシーズンは続けていこうと思う」と継続する意向を持っている。

 日本からも条件付き代表内定者が出ている東京五輪への道は、すでに狭き門となっている。それでも「1年延びて、もう一度サーフィンとスキル面を伸ばせるチャンス。今はやるだけ」とポジティブだ。「実力×運」のサーフィン。好機を確実に捉えるため、今は静かに実力を磨く。

 《WG6位以内で五輪出場権獲得》五輪で初めて実施されるサーフィンの出場選手枠は男女各20人で、各国の出場枠は最大男女各3。日本は男子の五十嵐カノア(木下グ)と村上舜、女子の松田詩野が条件付きで代表権を獲得し、権利は維持される見込みだ。2度の延期を経て、今年10月から21年の年明けに開催される見込みのワールドゲームズ(WG=世界選手権に相当、エルサルバドル)が最終予選となる。WGの出場枠も各国男女各3で、日本は残り男女各1枠ずつ。須田が五輪に出場するにはジャパンオープンでWG出場権を獲得し、WGで上位6人に入るなど、乗り越えなければならない壁は高い。

 《LINEで受講者募集》在住する種子島では緊急事態宣言が解除されたが、須田は引き続き、レッスンの受講者を募集している。希望者はLINEでID(@375kgksi)を検索し、レッスン希望を伝える。料金は1レッスン70分4000円(税込み)となる。

 ◆須田 那月(すだ・なつき)1995年(平7)9月7日生まれ、鹿児島県出身の24歳。11歳でサーフィンを始め、11年にプロ試験に合格。14年に国内プロ大会で初優勝し、15年からワールドサーフリーグ(WSL)の予選シリーズ(QS)に一部参戦。昨年は国内プロで初のグランドチャンピオンに。日本連盟強化B指定選手。1メートル57。

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