【上水研一朗の目】影浦 敗戦を糧につかんだ「得意技の間合い」

[ 2020年2月11日 05:00 ]

柔道 グランドスラム(GS)パリ大会最終日 ( 2020年2月9日    フランス・パリ )

男子100キロ超級3回戦でフランスのテディ・リネール(下)を攻める影浦心
Photo By 共同

 男女計7階級が行われ、男子100キロ超級の影浦心(24=日本中央競馬会)は準優勝した。3回戦では五輪2連覇中、公式戦154連勝中だったテディ・リネール(30=フランス)を破る大金星を挙げ、東京五輪代表選考で大きくアピール。16年リオデジャネイロ五輪銀メダルの原沢久喜(27=百五銀行)の背中を追う1メートル79、120キロの小兵が、猛烈なスパートをかけた。

 他を圧倒する体格と力強い引き手(左手)が武器のリネールは、同じ右組み相手の相四つでは自分の形にはめ、技を出すのが必勝パターンだ。一方で左組み相手のけんか四つでは胸が合わず、必勝パターンにはめづらい。普段は得意とは言えない釣り手(右手)で相手の袖を持ってコントロールし、頃合いを見て本来の襟に持ち替え、間合いを詰めて技を出す。昨年10月の初対戦では釣り手を落とされ対応できなかった影浦だが、今回は組み手のアプローチを工夫していた。リネールに釣り手を絞られても慌てずに足技を出し、徐々に襟を持たせる流れに持ち込みながら、得意の担ぎ技が出せる間合いをつくったことが勝因。左組みで体さばきがうまく、バランスがいい影浦だからできた戦い方だった。

 リネールが万全とは言えない状態だったとはいえ、10年間、誰も勝てなかった相手を破ったことをどう評価するか。五輪代表争いはGSデュッセルドルフ大会の原沢の結果次第だろうが、大きな風穴をあける勝利だったことは間違いない。(東海大体育学部武道学科教授、男子柔道部監督)

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2020年2月11日のニュース