鈴木が金!史上初の快挙で東京切符「世界一美しいフォーム」で故障も不祥事も乗り越えた

[ 2019年9月30日 05:30 ]

陸上世界選手権 第2日 ( 2019年9月28日    ドーハ・ハリーファ国際競技場 )

ガッツポーズでゴールテープを切る鈴木(撮影・小海途 良幹)
Photo By スポニチ

 日本競歩界のエースが金字塔を打ち立てた。午後11時半(日本時間29日午前5時半)スタートとなった男子50キロ競歩で日本記録保持者の鈴木雄介(31=富士通)が高温多湿のレースを4時間4分20秒で制して東京五輪代表に内定した。日本競歩勢の五輪、世界選手権での金メダルは史上初の快挙。世界選手権での金メダルは11年大邱大会の男子ハンマー投げの室伏広治以来5人目。暑熱環境で戦えることを証明し、東京五輪の金メダル最有力候補に名乗りを上げた。

 目深にかぶったキャップに暑熱対策用の保冷剤を首と手のひらに巻き付けるいささか不格好なスタイルだが、“世界一”と称される鈴木の歩型が乱れることはなかった。前回王者のディニ(フランス)やリオ五輪覇者、トート(スロバキア)がリタイアする中で50キロを誰よりも速く、そして美しく歩ききった。日本競歩界のパイオニアは「これだけではなく、東京の金メダルもある。獲れるものは全部獲りたい。世界的なレジェンドになりたい」と熱く語った。

 圧巻の独歩ショーだった。序盤で抜け出すとあとは暑さとの闘いだけ。残り5周の給水時には脱水気味となり、止まるほどペースを落としたが「胃が疲れて歩きながらだと給水がきついので戦略的ペースダウン。しっかり飲んでスタートできたし、うまくいきました」と明かした。

 15年3月に20キロで世界記録を樹立した実力者。同年8月の世界選手権(北京)では恥骨炎の影響で11キロすぎで途中棄権し、その後、長期離脱した。リハビリ期間には強化費の不正申請で資格停止処分も受けた。故障が癒えて18年5月に復帰するまでは引退も考えた。その鈴木を競技につなぎ留めたのは人とのつながりだ。競技にストイックなあまり飲み会などには参加してこなかったが、故障期間中にふとしたきっかけで飲み会に出席するようになってから応援してくれる人の多さに気が付いたという。ゴール直後は手渡された国旗で涙を拭い「ここに戻してくれた全ての人たちのおかげで帰ってこられた。自分以上に自分を信じてくれた人がいた」と思いがあふれた。

 世界選手権代表を逃した20キロでも五輪金メダルを貪欲に狙う。来年2月に行われる日本選手権出場を明言し「まずは20キロの代表権を獲ってからどちらかは考えたい。ぜいたくな悩みをしたい」とニヤリ。暑熱レースを勝った自信は20キロ、50キロともに東京五輪の金メダルに直結する。「もう完全復活ですね」。心身共に一回り成長したエースが1年を切った真夏の激闘を見据えた。

 ◆鈴木雄介(すずき・ゆうすけ)
 ☆生まれとサイズ 1988年(昭63)1月2日生まれ、石川県能美市出身の31歳。1メートル71、58キロ。
 ☆競技歴 辰口中で本格的に陸上を始め、3000メートル競歩、5000メートル競歩で中学最高記録。小松高では世界ユース1万メートルで銅メダルを獲得。
 ☆世界大会の実績 過去に世界選手権4大会に出場し、11年大邱大会で20キロ競歩4位が最高。12年ロンドン五輪は20キロ競歩で36位。
 ☆自己記録 15年3月に20キロ競歩で1時間16分36秒の世界記録。50キロの事実上のデビュー戦となった19年4月日本選手権で3時間39分7秒の日本記録をマーク。
 ☆「世界一美しい」 上下動が少なく滑らかに足を運ぶフォームは世界一と称され選手もお手本に。これまで一度も歩型違反による失格を受けたことがないことも理由の一つ。
 ☆処分 17年10月に強化費の不正申請で6カ月の資格停止処分。
 ☆趣味 バスケットボール、サッカー。

続きを表示

この記事のフォト

2019年9月30日のニュース