川内優輝がMGC男子を大予想!!マラソン五輪切符をつかむのは!?
2020 THE TOPICS 話題の側面
9月15日号砲の20年東京五輪マラソン代表選考会、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)まで、約1カ月となった。上位2人が夢切符を獲得する大一番を前に、世界選手権(9月27日開幕、ドーハ)代表の川内優輝(32=あいおいニッセイ同和損保)が男子を独占大予想。マラソン完走95回を誇るプロランナーの目に映る、五輪代表の有力候補とは――。
本命は井上大仁(26=MHPS)ですね。18年アジア大会(※1)のタイムが遅かったとかで、あまり評価されていないですけど。17年ロンドン世界選手権、18年東京マラソンを見ても、従来の井上は前半突っ込んで、どこまで持つかというタイプでした。でも、暑いアジア大会でラストスパートで勝つという違った一面を見せました。アジア大会では帽子を冷やしてみたり、ユニホームを加工して涼しいものにしていたりとか、暑さへの準備もしっかりしていました。
実業団の知り合いから、井上は合宿での50キロの走り込みやスピード練習で、ずばぬけているというのをよく聞くんですよ。井上はここ数年、ケガらしいケガが表に出てきていないのもいいですよね。継続して練習が積めるというのは、凄く大きい部分。今年のボストン(※2)で失敗しても、7月のホクレン・ディスタンスのトラックの1万メートルで28分8秒10とスピードも戻してきているので、ボストンを引きずっていないのも凄くいいのかなと思いますね。
もう一人挙げるなら、前日本記録保持者の設楽悠太(27=ホンダ)です。私も出場していた7月のゴールドコースト(※3)が、本当に良かった。今までの設楽は井上と同じで、前半突っ込んでひたすら粘るタイプだったのですが、ゴールドコーストでちょっと違う走りをしていました。36キロくらいで反対車線ですれ違った時、設楽は3番手くらいを走っていたのですが、最終的にはラスト2キロでスパートをかまして優勝。あの走りでイメージが変わりましたね。
ただ、ペースメーカーがいないMGCが今までに走ったことのないようなスローペースになった時に、設楽は我慢できるかどうか。MGCで前を引っ張れる選手って、設楽を含めて数名しかいないと思うんですよ。序盤から前に行ってしまうと、やっぱり彼が思うほどうまくいかないんじゃないかな。また、気温30度を超えるようなレースで、どういう走りができるかは未知数なので、暑い中で結果を出している井上よりは評価は低くなるのかな、と感じています。
暑いレースでの実績という意味で、北海道マラソン組の中では、18年大会優勝の岡本直己さん(35=中国電力)に注目しています。皆さんの注目度は低いかもしれませんけどね。岡本さんはこれまでハーフや駅伝では強かったのですが、マラソンでは中盤にガス欠を起こして駄目だった。でも、岡本さんってマラソンでは福岡国際とか東京とか寒いレースばかり走っていたんですよ。以前、夏場の札幌国際ハーフでも強かったですし、北海道でも結果を出しました。暑さに強いんだと思います。
7月の士別ハーフで岡本さんは4位でしたけど、ラップを見ると15キロまではそれほど速くないペースで走って、15~20キロを14分56秒に上げています。そして、ラストの1・0975キロは3分6秒ですよ!マラソンのラスト2・195キロに換算すると6分12秒。これは世界レベルの上がりですからね。誰よりもMGC向きの練習ができているんじゃないかと思います。他の有力選手に比べてプレッシャーも少ないでしょうから、面白い存在になりそうですよ。
ダークホース的にもう一人挙げるとすれば、佐藤悠基(32=日清食品グループ)ですね。5月の仙台国際ハーフも7月のゴールドコーストのハーフも日本人トップ。調整は順調に見えます。昨年のベルリンでは35~40キロを14分40秒を切るようなペースアップができていました。この走りができれば、スローペースで進みそうなMGCで有利になるかもしれません。
ここまで名前が出ていない日本記録保持者の大迫傑(28=ナイキ)は、普通に見れば強いのは強いでしょう。ただ、直近のマラソンがMGCと同じようなコースで行われた3月の東京の途中棄権(※4)というのは、あまりいいものではないと思います。MGCで本当に苦しい場面が来た時に粘ることができるのか。途中棄権を一回してしまっていることで、棄権に対する誘惑のハードルが下がってしまっている可能性だってありますよ。
日本記録保持者ということで、相当なプレッシャーがかかるでしょうし、他のランナーは意識しなくても自然と大迫をマークする形になると思います。マークされるということは、誰かしらが近くを走っているということ。そうなると、接触とかでイラッとすることも増えるわけです。夏場の苦しいレースでイラッとすると、その分消耗しますからね。そういう危険もはらんでいて、他のランナー以上に大変なんじゃないかな。
私は出場しませんが、MGCは本当に楽しみで、ワクワクしますね。東京五輪の選考会というだけじゃなく、レガシーとして今後に残るようなレースになってほしいと思っています。私も間違いなく、どこかで見ていますよ。ほぼ全員、一緒に走ったことがある選手ですからね。モチベーションをもらって、世界選手権で目標にしている入賞に突き進みます!(プロランナー、19年世界選手権代表)
(※1)ゴール時の気温が30度という過酷なレースとなったが、井上はエルアバシ(バーレーン)とのトラック勝負を制し、2時間18分22秒で金メダルを獲得した。
(※2)井上は序盤は先頭集団についたが、30キロ付近で脱落して2時間11分53秒の12位。連覇を狙った川内は2時間15分29秒で17位だった。
(※3)設楽は40キロ以降を独走し、2時間7分50秒の大会新記録で優勝。川内は2時間15分32秒で13位だった。
(※4)大迫は冷たい雨が降るハイペースの中、25キロすぎで集団から遅れると29キロ付近で、4度目のマラソンで初となる途中棄権。
▽マラソングランドチャンピオンシップ 男子が午前8時50分、女子が同9時10分にスタート。17年8月から19年3月までの国内主要大会で日本陸連の設定記録を突破するか、19年4月30日まで開催される国際陸連が世界記録を公認する大会で条件を満たした選手が出場資格を持ち、男子は31人、女子は12人がエントリー。コースは発着場所以外は東京五輪をほぼ踏襲。東京五輪は男子が8月9日、女子が同2日、いずれも午前6時にスタートする。
▽東京五輪マラソン選考 MGCで男女上位2人が決定。残り1人は、19年秋以降の男女各3大会(男子=福岡国際、東京、びわ湖毎日、女子=さいたま国際、大阪国際、名古屋ウィメンズ)で設定記録(男子2時間5分49秒、女子2時間22分22秒)を突破した最上位選手を選ぶ。突破選手がいない場合はMGC3位が五輪代表となる。
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