【荒磯親方 名古屋場所総括】若手の活躍評価!大栄翔は「安定感出てきた」

[ 2019年7月23日 09:00 ]

<大相撲名古屋場所11日目>正代(右)を上手投げで破った大栄翔(撮影・坂田 高浩)
Photo By スポニチ

 両横綱はやはり安定感がありました。鶴竜は場所前に腰を痛め、白鵬は休場明け。それでも2人で優勝争いしたというのは、凄いとしか言いようがありません。大関陣が4人全員休場した中で、両横綱が引っ張りました。鶴竜は今場所、速い相撲が多く、また強くなっている感じでした。パターンが増えていて、頭からいって前まわしを取りにいくのもスピードが増していました。

 平幕では照強が12勝を挙げて敢闘賞を受賞しましたが、三賞力士が並んでいる写真を見ても、友風や遠藤に引けを取らない体つきをしていました。これも稽古のたまものです。私は現役時代、伊勢ケ浜部屋の合宿に行ったことがありましたが、もの凄い稽古量でした。照強は負けず嫌いな性格なので、稽古場からガンガンいって、よっぽどいい稽古をしているのでしょう。当たられても下がらないし、いなしてからも一気に前に出る力もあり、今場所に限っては小兵という感じがしませんでした。四つに組んでもしっかり腰を当てて、大きな肩を使いながら入り込んでいました。1場所でここまで変われるのですから、夏巡業で一皮むけて、さらにいい相撲を取ってもらいたいと思います。最近は少なくなった叩き上げで、頭の先から爪先まで相撲界に浸っています。どこまでやれるか楽しみにしています。

 炎鵬のことは応援していたので、勝ち越すことができてよかったです。技能賞を受賞しましたが、最後は正攻法でした。あれが彼の強さです。小兵ですが跳んだり跳ねたりの相撲ではなく、しっかり腰を当てて左を差しにいってました。正攻法があるからこそ、大技も決まります。白鵬と同じ部屋なので、これからも厳しい指導を受けるでしょう。合宿でもよく稽古をしていたと聞きましたが、いい稽古をすれば花が咲くということです。

 殊勲賞の友風は懐の深さで、はたくところがありました。それはうまさでもあるのですが、もっともっと伸ばしていくには、懐の深さを生かしてどんどん突き押しをしていくことです。三役、大関を目指していけるだけの体つきですし、センスもあります。あとは馬力だけです。30歳になって馬力をつけようとしてもつきません。今しかできないことです。無理をしてでも稽古で押していく力をつけていけば、もっと変わってくるはずです。

 技能賞の遠藤は、しぶとさというか、また強いときの相撲が千秋楽の北勝富士戦で見られました。寄られている時でもまわしを取る位置などを分かっていて、そういうところは彼の右に出る者はいないと思います。その技術力には私も勉強させられます。上位陣に共通していることは、全て圧力があるということ。遠藤が怖さを見せるため、求められるのは圧力の強さでしょう。

 他に目についたのは大栄翔です。動きにも安定感が出てきて、白鵬戦でも慌てさせるところがありました。これまではあっさり負けることもありましたが、ちょっと変わってきた感じです。明生は4勝11敗という結果に終わりましたが、出足を生かすためにはまわしを切る作業を覚えることが急務でしょう。御嶽海戦もそうでしたが、相手に上手を取られると体重差が出てしまいます。まわしを切る技術を覚えて体重が増えていけば、黒が白に変わっていきます。

 若い力士が上位に上がっていくためには、考えて相撲を取ることが大事です。私もいろいろ考え始めるようになってから強くなりました。大関経験者と関脇以下では、話をしていても考え方が違います。自分というものをしっかり考えて、弱いところを認めるとか、強いところを伸ばすとか。みんな分かってやっています。大切なのは自信を持つことよりも、弱さをみつけて稽古をすることです。(スポニチ本紙評論家)

続きを表示

この記事のフォト

2019年7月23日のニュース