やり投げ新ヒロイン 北口榛花“鼻血効果”でぶっとび日本新!今季世界6位の記録も「まだまだ伸ばす」

[ 2019年5月7日 05:30 ]

陸上・木南道孝記念 ( 2019年5月6日    ヤンマースタジアム長居 )

女子やり投げで64メートル36の日本新記録をマークして優勝し、笑顔の北口榛花
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 女子やり投げの北口榛花(はるか、21=日大)が5投目に日本新記録の64メートル36を投げ、東京五輪の参加標準記録(64メートル)をフィールド種目で最初に突破した。ウオーミングアップ中に鼻血が出たことで逆にリラックス。2月に単身チェコ修業を積んだ効果が表れ、来年の祭典出場へ大前進した。これまでの日本記録は、2015年に海老原有希がマークした63メートル80だった。

 予期せぬアクシデントに北口は襲われていた。朝、洗顔中に鼻血が出た。競技場に来てから、ウオーミングアップ中に再び出血。救護室で手当てをしてもらい、ティッシュを鼻に詰めて、招集場所へ向かった。肩の力が不思議と抜けた。

 「鼻血が出たから、記録が出てなくてもしょうがないかなと思った。保険ができた」

 開き直りが好結果を生んだ。4投目に63メートル58をマークし、5投目に大遠投。海老原の記録を56センチ更新する日本記録を出したと同時に東京五輪の参加標準記録64メートルも突破した。9月末からの世界選手権の参加標準記録も突破。跳びはねて喜んだ。

 「今まで日本記録を目標にしてきた。やっとというのと、東京五輪の参加標準を切れて、うれしさとホッとした気持ちがある」

 金の卵である。バドミントンと競泳で鍛えた体で、旭川東高3年時に18歳未満が出る世界ユースで優勝した。しかし、日大進学後は右肘の故障、コーチ不在の境遇が重なって伸び悩んだ。昨年の日本選手権前は精神的に苦しみ、体重が5キロ落ちて86キロになった。

 今年になって「自分からアクションを起こした」と一念発起。2月、単身でチェコに乗り込んだ。男女の世界記録保持者を輩出する“やり投げ王国”で「世界トップの技術を学んだ」。投げる際にやりを下から引くように変えるなど技術を修正。助走のスピードが増し戦う態勢ができた。

 64メートル36は、リオ五輪の6位相当、今季世界6位の好記録だ。それでも「世界選手権や東京五輪での決勝、メダルを考えるとまだまだ記録を伸ばさないと」と柔らかい口調に決意を忍ばせた。1メートル79の恵まれた体で、愛きょうがある性格も魅力。大器が目覚めた。(倉世古 洋平)


 ▼北口 榛花(きたぐち・はるか)1998年(平10)3月16日生まれ、北海道旭川市出身の21歳。日大4年。旭川東高校で陸上を始める。高1の途中までは競泳に取り組み有望選手だった。16年リオデジャネイロ五輪代表を逃し、その挑戦過程で右肘を痛めた。日本陸連が有望選手を支援する「ダイヤモンドアスリート」にも選出された。これまでの自己記録は61メートル38。1メートル79、86キロ。

 ▽東京五輪への道 国際陸連が定める参加標準記録を突破するか、世界ランキング上位に入れば出場資格を得られる。リレーをのぞいて、各種目の最大参加選手は3人。ただし、日本代表の選考方法は決まっておらず、今後決まる。来年の日本選手権が重要な位置付けとなる見通し。16年リオ五輪でのトラック・フィールド種目は、「日本陸連が独自に定める派遣設定記録をクリアして日本選手権で8位以内かつ最上位」、「国際陸連が定める参加標準記録を突破し、日本選手権で優勝」などが選出基準だった。

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2019年5月7日のニュース