荒磯親方 春場所を総括 最も印象に残った「千秋楽の貴景勝」

[ 2019年3月26日 08:30 ]

春場所を総括したスポニチ本紙評論家の荒磯親方
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 大相撲初場所で現役引退し、本紙評論家となった元横綱・稀勢の里の荒磯親方(32)が、春場所の土俵を初総括した。平成最後の場所で大関昇進を確実にした貴景勝(22=千賀ノ浦部屋)ら若手の活躍を絶賛。さらなる躍進に期待を込めた。貴景勝は一夜明け会見を行い、将来の横綱昇進へ強い決意を示した。

 初めて客観的に相撲を見ましたが、いろいろなドラマがありました。横綱・白鵬が42回目の優勝を飾り、貴景勝の大関獲り、栃ノ心のカド番脱出が懸かっている相撲もあり、非常に盛り上がりました。高安、豪栄道の大関勢も安定した中で逸ノ城ら平幕力士が活躍。栃ノ心の陥落は残念ですが、場所前に期待した通りの熱戦が続き、“荒れない春場所”でも最近では一番いい場所になったのではないでしょうか。

 最も印象に残っているのは千秋楽の貴景勝の相撲です。栃ノ心を一気に持っていきましたが、勝たなければ2桁勝利に届かないという重圧の中で力を出し切れるのはたいしたものです。貴景勝の相撲を支えているのは足腰の強さ、特に腰の力です。現役時代、貴景勝との初対戦(17年名古屋場所)から1年ぐらいたつと、圧力は全く違っていました。腰が決まっていることで安定感も出てきました。

 強さが目立ったのは、逸ノ城です。逸ノ城には「止まれる強さ」がありました。よく足を動かせと言われますが、強くなければバシッと止まることができません。立ち合いの1歩目が速く、2歩目で両足が地面につくのも速い。相手は押しにいっても四つを組みにいっても吸い込まれていました。圧力を感じて動いたところではたかれる。逸ノ城ははたき込みで6勝していますが、たまたまではなく意味があるのです。

 大栄翔は7勝8敗で負け越しましたが、高安、豪栄道を破るなど急激に力をつけてきたという印象です。出足もいいし思い切りもいい。大きな突っ張りも威力があるのでしょう。来場所も横綱、大関と当たるようなら楽しみな存在です。

 日本出身力士が優勝から遠ざかっていたときに琴奨菊が優勝(16年初場所)して、日本勢の活躍が続くようになりました。きっかけがあれば続く。平成最後の場所で貴景勝が大関昇進を確実にしましたが、「次は俺だ」と思っている若手力士はたくさんいるはずです。もう1人、2人、貴景勝の対抗馬として出てくれば、新元号になっても盛り上がっていくでしょう。(元横綱・稀勢の里)

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