貴景勝 大関昇進決めた!栃ノ心との“入れ替え戦”制し10勝到達

[ 2019年3月25日 05:30 ]

大相撲春場所千秋楽   ○貴景勝―栃ノ心● ( 2019年3月24日    エディオンアリーナ大阪 )

栃ノ心(右下)を破り10勝目を挙げ大関昇進を確実にした貴景勝(撮影・亀井 直樹)
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 関脇・貴景勝(22=千賀ノ浦部屋)が場所後の大関昇進を確実にした。昇進目安へあと1勝で迎えたカド番大関・栃ノ心(31=春日野部屋)との“入れ替え戦”を電車道で完勝。初土俵から28場所での昇進は前師匠・元貴乃花親方(30場所)を超える史上6位のスピード出世となった。

 昇進を決定づける1勝を挙げると、若武者の頬を光るものが伝った。騒然とする場内で唇を震わせ、何度も深呼吸した。負ければ昇進見送りもあった大一番。貴景勝は勝利をつかみ「ホッとした。熱くなったというか全身の力が抜けた。最後、最後だけは勝てて良かったです」と大きく息をついた。

 カド番大関との“入れ替え戦”。軍配が返り、手をつくまでは「相手の顔は見なかった」。極限まで集中力を高め「記憶がない」ほど無我夢中だった。ぶちかまして栃ノ心をはじきエンジン全開で前に出た。3秒1の早業だったが、「緊張してやばかった」と重圧で押しつぶされそうだった。

 昨秋に貴乃花部屋の消滅とともに千賀ノ浦部屋に移籍。「引き取ってもらった恩がある」と直後の九州場所を制して千賀ノ浦親方(元小結・隆三杉)に恩返しした。もちろん原点も忘れていない。「貴と付く俺たちが頑張らないと貴は忘れられる。自分らが活躍しないと貴は廃盤になる」。栃ノ心を一蹴した電車道は“貴魂”を継承する男の生きざまだった。

 小3から歩んだ父・一哉さんとの相撲道は今場所も変わらない。初黒星を喫した御嶽海戦後、観戦した父から「タオル持って応援してくれた人のところに行って“こんな子供を育てて申し訳ない”と土下座して謝りたい」と言われ「グサッときた」と心を痛めた。4日目以降は仕切り中にあえてファンを見て闘争心をかきたてた。

 中盤を乗り越えたが、3場所ぶりの連敗で終盤は苦戦。千秋楽前夜は自分と向き合い、答えを出した。「わんぱく相撲の時から体の大きい人とやってきて、自分は体が小さくて優勝とかできなかったけど、何とか自分の体を武器にしてやってきたことをもう一回思い出した」。それはコンプレックスを武器にした父との相撲だった。

 重圧から解放されて潤んだ瞳を涙とは絶対に認めなかった。それは、高校時代に「格好悪いから泣くな」と言われた「親父との約束だから」。父の教えを貫き射止めた大関の地位。「2場所で落ちたら何の意味もない。そこがゴールじゃないし、さらに上を目指さないと務まらない」と覚悟をにじませた。

 ◆貴景勝 光信(たかけいしょう・みつのぶ=本名佐藤貴信)1996年(平8)8月5日生まれ、兵庫県芦屋市出身の22歳。小3で相撲を始め、兵庫・報徳学園中時代に中学横綱、埼玉栄高3年の14年に世界ジュニア選手権無差別級優勝。同年秋場所に貴乃花部屋から初土俵。17年初場所新入幕。18年初場所新小結。同年10月に貴乃花親方(元横綱)の日本相撲協会退職により千賀ノ浦部屋へ移籍し、九州場所で初優勝。殊勲賞3回、敢闘賞2回、技能賞2回。得意は突き、押し。1メートル75、169キロ。

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