バスケ男子日本代表 5大会ぶり予選勝ち抜きW杯へ!現場改革3ポイント

[ 2019年2月20日 09:06 ]

2020 THE PERSON キーパーソンに聞く

3大会ぶりW杯出場のためチームの強化と改革に奔走!!日本代表・篠山主将が記した「日本一丸」という書の前でポーズを取る東野技術委員長(撮影・大塚 徹)
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 バスケットボール男子日本代表はW杯アジア2次予選のラスト2試合で21日にイラン(テヘラン)、24日にカタール(ドーハ)と対戦する。4連敗スタートから6連勝し、開催国枠で出場した06年大会以来、3大会ぶりのW杯出場が手の届く位置まで来た。予選を勝ち抜いての切符獲得は98年大会(アテネ)以来5大会ぶりとなる。16年5月の就任からチーム強化に奔走した東野智弥技術委員長(48)の改革に迫った。

 就任から2カ月半後の16年8月初旬。五輪開催中のリオデジャネイロ市内のホテルの一室で、日本代表の新監督の選定に着手した東野技術委員長はFIBAのゾラン・ラドビッチ・スポーツディレクターと向き合っていた。76年モントリオール大会を最後に五輪から遠ざかっており世界からは置き去りの状況。アドバイスを求めるために何度も面会を申し入れ、ようやく会談にこぎ着けた。

 作成した30人のリストを見せると「ありえない!」と笑われた。「92年バルセロナ以降の五輪経験者」を唯一の条件にリストアップしたため、予算とばく大な開きがあったり、既に数年先までの複数年契約を結んでいる監督も多数リスト入りしていた。候補者は瞬時に6、7人に減り、3度目のミーティングで4人に絞られた。

 その中に運命を感じる名前が残った。「フリオ・ラマス」。東野技術委員長は11年に「男子アルゼンチンバスケットボールの強化・育成に関する研究」の論文を発表している。「アルゼンチンは52年(ヘルシンキ)に出場してから96年(アトランタ)に再び出場するまで44年も五輪から遠ざかったのに、04年アテネ五輪で優勝した。五輪に出られない期間、平均身長も日本と近く興味を持った」。その取材で現地に行き、話を聞いた1人がアルゼンチン代表監督として結果を残していたラマス氏だった。

 他の最終候補3人の代理人とは即座に連絡を取れたが“本命”との接触は難航した。初コンタクトは五輪視察を終えてリオをたつ便の搭乗30分前。本人との電話で直接、監督就任を打診すると「面白い」との回答を得た。「直接、会いたい」と申し入れると「OK」の返事。帰国後1週間もたたないうちにアルゼンチンに飛んだ。

 その後は密着マークの日々。ラマス氏が指揮するクラブの練習や試合を追い掛けた。アルゼンチン国内はもちろん、プレシーズンマッチでトロントにも飛び「パスの力をうまく使う。日本に合う」と確信。足しげくラマス氏の元に通った熱意と、20年東京五輪に向けて開催国の強化を願うFIBAのバックアップもあり、ロンドン五輪4強の実績を持つ世界的名将との契約に成功した。

 ラマス監督の脇を固めるコーチングスタッフの充実も、東野技術委員長の功績の一つだ。就任間もない16年9月、NBAで実績のある佐藤晃一氏をスポーツパフォーマンス部会の部会長として招へいした。08〜12年にウィザーズでリハビリコーディネーター、12〜16年にティンバーウルブズでスポーツパフォーマンスディレクターを務めた人材を登用。世界と戦うためにフィジカル面を見直した。

 筋力、持久力など個々に応じた目標を設定。練習効率を上げるため、コートの脇に筋力トレの器具が置かれるようになった。栄養学の“座学”で食事の内容や摂取時間、一日の過ごし方などの改革にも着手。東野技術委員長は「今は体脂肪は多くの選手が1桁だと思います。(全盛期の)マイケル・ジョーダンが4%なので、ガード・フォワード陣の10%超はおかしいですよね」と語る。

 映像分析の担当も2人から総勢5人に増員した。情報収集力にたけ、多くのスタッフが英語を話せる。チーム内での対話力も重視した結果、コミュニケーション能力の高い陣容となった。試合前には選手に対峙(たいじ)する相手が「右に抜くのが好き」「左が好き」「1ドリブルしてから何かする癖がある」などの細かい情報も提供されている。

 チーム強化の鍵はゴール下の支配力だった。近年のアジアの傾向として、フィリピン、韓国、カタールなどの強豪国が積極的に国籍変更選手の取り込みを行っていた。加えて世界トップクラスのオーストラリアやニュージーランドが属するオセアニアが、アジア地区に統合されたこともあり、競争力は激化。世界レベルでは当たり前のように存在する、サイズのあるゴール下を支配できる選手の存在が必要だった。

 国籍変更選手の重要性を訴えていた東野技術委員長にとって、Bリーグ初代MVPに輝いたファジーカス・ニック(33=川崎)の存在は魅力だった。身長2メートル10のビッグマンは、12年に来日し、東芝(現川崎)でプレー。正確を期すために取材は通訳を介すが、日本語の理解力も高い。「誰かから頼まれたわけでなく、自分から日本国籍を取得しようと思った。来日した直後から日本を気に入っている」と語っているが、東野技術委員長が国籍変更選手の発掘を公言していたことが契機となり、ファジーカスの代表入りが動きだしたことは間違いない。

 18年4月26日に日本国籍を取得すると、代表デビュー戦となった6月29日のW杯アジア予選オーストラリア戦からフル回転。25得点12リバウンドを記録してチームのアジア予選初戦からの連敗を4で止める金星に貢献した。

 6、7月のオーストラリア、台湾戦と、9月のカザフスタン、イラン戦では2メートル3の米ゴンザガ大3年生、八村塁(21)の招集にも成功した。当初は授業と大学でのプレーとの兼ね合いで代表活動への参加は難しいと考えられていた。しかし、東野技術委員長は20年東京五輪を控える日本代表の中心選手としての必要性を大学、そして八村本人にも訴え続けた。代表活動の際にはゴンザガ大のアシスタントコーチが同行することも約束。今春のNBAドラフト上位指名候補を熱意と誠意で口説き落とした。

 NBAのグリズリーズとツーウエー契約を結ぶ2メートル6の渡辺雄太(24)の所属チームとも密に連絡を取り、9月の2試合で招集が実現。東野技術委員長は「雄太の中にあった“俺抜きでオーストラリアに勝ったのかよ”という思いも招集の追い風になったと思う」と振り返った。3大会ぶりのW杯出場に迫るチームの裏には、水面下で奔走を続ける強化部門トップの存在がある。

 ▽W杯アジア2次予選 1次予選を勝ち抜いた12チームがE、Fの2組に分かれ、各組3位以内と4位の上位の計7チームが本大会出場権を獲得する。中国は開催国枠での出場が決まっているため、E組は中国が3位以内なら4位が繰り上がりで出場。中国が4位以内なら5位チームがF組4位との比較対照となる。比較の優先順位は(1)勝ち点(2)得失点差(3)総得点。勝ち点は勝利2、負け1。1次予選の成績も持ち越されている。次戦で日本がW杯出場を決めるにはイラン戦の勝利が必須条件。かつフィリピンがカタールに敗戦、もしくはE組のヨルダンが中国に敗れる必要がある。それ以外は24日に持ち越しとなる。

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