元稀勢・荒磯親方 NFL流で角界に新風

[ 2019年2月20日 07:20 ]

スポニチ本社を訪問し、社員の大歓迎を受ける荒磯親方(撮影・小海途 良幹)
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 1月の大相撲初場所限りで現役を引退した元横綱・稀勢の里の荒磯親方(32)がスポニチの評論家に就任することが決まり、19日に東京都江東区のスポニチ本社を訪れた。春場所(3月10日初日、エディオンアリーナ大阪)から玉ノ井親方(元大関・栃東、42)とともに評論家活動をスタートさせる。弟子の育成に向けては、アメリカンフットボールの最高峰、NFLのトレーニング方法などを取り入れる改革プランも明かした。

 黒のスーツ姿でスポニチ本社を訪れた荒磯親方は、評論家就任のあいさつで河野俊史社長と対面。現況について聞かれると「凄く体調がいい。ストレスがなくなった分、今の方が体は軽い感じ」と、現役時代にはほとんど見せることのなかった笑顔で答えた。

 2月10日の大相撲トーナメントでは解説者デビューを果たし、経験を踏まえた語り口はツイッターでも「良かった」という声が多かった。今後は紙面やスポニチアネックスでも魅力を伝えていく。「相撲に興味がない人にも興味を持ってもらうには、言葉(で表現する)くらいしかない。しっかり伝えられるように勉強していきたい」。技術論だけでなく力士の精神面にも踏み込んでいく。「体の使い方とか、そんきょしている状態の意識の仕方とか。そこばっかり研究していたところもある。武術的な部分を伝えていきたい」と抱負を語った。

 現役を引退して田子ノ浦部屋の部屋付き親方となり、相撲協会では指導普及部に配属された。17年に及んだ現役生活で経験したことを、指導者の立場でも還元していく。大関までの15年間は大きなケガがなかったが、新横綱の17年春場所で左大胸筋などを負傷すると丸2年、ケガに泣かされた。「本当に思うようにいかなかった。でもケガをしないと分からないこともある。それを次につなげていければ」。目標とするのは「一生懸命相撲を取る力士、ケガに強い力士」の育成だ。

 視線は海外にも向いている。アメリカンフットボール好きとして知られ、NFLのトレーニング方法や施設にも興味を持っている。9月29日に両国国技館で予定されている断髪式を終えた後は、「NFLは最新のトレーニング法を用いている。勉強に行ってみたい」と現地視察を視野に入れている。「相撲は稽古で体をつくるが、日本人の体つきも海外の人のようになってきているので(アメフットのトレーニングが)相撲界にも使えるのでは」といいものはどんどん取り入れていく考えだ。

 現役生活は終わったが、相撲協会の定年(65歳)までは32年以上もある。最高位を経験した荒磯親方には、まだまだやるべきことが残されている。伝統文化であり、日本の国技でもある相撲を、今後はさまざまな角度から支えていく。

 ◆荒磯 寛(あらいそ・ゆたか)本名萩原寛。1986年(昭61)7月3日生まれ、茨城県牛久市出身の32歳。2002年に鳴戸部屋(当時)に入門し、同年春場所で初土俵。17歳9カ月の新十両(04年夏場所)、18歳3カ月の新入幕(同年九州場所)は、ともに貴乃花に次ぐ史上2位の若さ。11年九州場所後に大関昇進。17年初場所後に第72代横綱に昇進。同年春場所で22年ぶりの新横綱優勝を果たした。この場所で負った左大胸筋などのケガに苦しみ、今年の初場所限りで現役引退。年寄「荒磯」を襲名して田子ノ浦部屋付きの親方となった。優勝2回。殊勲賞5回、敢闘賞3回、技能賞1回。通算101場所800勝496敗97休。

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