【砂村光信氏が分析】史上初のW杯8強入りへ ジャパンよかく戦え
初のW杯8強を目指すジャパンは1次リーグA組でロシア、アイルランド、サモア、スコットランドの順に対戦する。A組2位以内に入るためにはどんな選手を起用し、どのような戦い方が勝利につながるのか。本紙評論家の砂村光信氏(元U―23日本代表監督)が対戦ごとに分析した。
◇ ◇ ◇
―――――ベストメンバーで勝って勢いつけろ―――――
【第1戦 ロシア(世界19位)】ロシアは昨年11月の対戦で、フィジカルの強さを押し出すシンプルなラグビーでジャパンを苦しめた。だが、後半に入ってFWが走れなくなった。英国の寒冷な気候でバテていたのだから、開幕戦が行われる9月中旬の日本は相当暑く感じるはず。ジャパンにホームアドバンテージがあるのは間違いない。
開幕戦でチームに勢いをつけるため、ジャパンは格下が相手でもベストメンバーを組むべきだ。幸い、次戦までは中7日ある。11月は試合の入りで失敗しただけに先発にはフィジカルの強い選手を起用し、最初の10分でトライを挙げて主導権を握り、後半最初に一気に突き放したい。早い時間帯でリザーブを出場させ、多くの選手にW杯の雰囲気を味わわせた上で快勝できれば理想的なスタートだ。
避けたいのはロシアFWに前へ出られて突破される展開。相手に不用意にボールを渡すようなキックは多用せず、ボールを継続するアタックで振り回して早めにバテさせたい。
―――――強豪相手に姫野の起用法がポイント―――――
【第2戦 アイルランド(世界2位)】アイルランドは今、本当に強い。北半球で1、2位を争う大きな体格を生かしながら、シュミット監督が導入したニュージーランド流のスキルでピッチを広く使うパスラグビーを見せる。強いプレッシャーで相手を後退させるディフェンスは、NZをノートライに抑えるほどだ。
ジャパンはまともに攻めてもはね返されるだけなので、スペースを突くような戦い方をしたい。ポイントはブレークダウン(タックル後のボール争奪戦)での「2人目」。アイルランドは2人目の寄りがとにかく速い。アタックでは相手より2人目が速い到達してボールを出し、ディフェンスでは2人で上下に行くダブルタックルの精度を上げたい。相手の強みであるセットプレーでの踏ん張りも重要。プレッシャーをかけられ、HB団に自由に動かれると厳しい。
キーマンは姫野か。ムードメーカーが得意のピック&ゴーで前へ出るようなら勢いがつく。FW第3列かロックか、どこで起用するかも重要になる。
―――――イライラさせて「規律」崩壊狙え―――――
【第3戦 サモア(世界16位)】スコットランドとの1次リーグ最終戦を見据え、フッカー堀江やSH田中らベテランを休ませながら勝ちたい試合だ。そのためにも若手のレベルアップが不可欠で、特に外国出身選手が多いFW2、3列で日本人の台頭が望まれる。フッカーの2番手は坂手も伸びているが、基本プレーが良い堀越が成長すれば面白いのではないか。
サモアは当たりが非常に激しいチームで、ディフェンスは跳ぶようにボールキャリアーに向かってくる。後退することなくアタックし、ボールをキープできるかが鍵だ。前回W杯の対戦でもシンビン(10分間退場)を出したように、サモアの課題はディシプリン(規律)。アタックし続ければ、イライラしてオフサイドやハイタックルの連発など守備が崩壊する可能性がある。
サモアはスコットランド戦から中4日で日本戦と厳しい日程。スコットランド戦の布陣次第で日本戦のメンバーは予想できる。それを確認してからメンバーを決めてもいいだろう。
―――――守りに定評・福岡&ヘンリーに期待―――――
【第4戦 スコットランド(世界7位)】1次リーグ2勝1敗同士で互いに8強入りを懸けた戦いになるとみている。スコットランドはジャパンのコーチ陣の指導法まで綿密に調査し、対策を練ってくるなど分析に優れる。3試合を消化した時点でのチームの分析力も問われる試合だ。
スコットランドも体格が大きく、強いFWが生命線で、ジャパンの勝敗はディフェンスできるかに懸かっている。オフロードパスなど立ってプレーするアイルランドに比べるとラックを形成してくることが多いので、ブレークダウンで入り負けないこと。FWだけでなく、バックスもボールキープやボール奪取に優れた選手を起用したい。FWのようなディフェンスができる福岡はもちろん、精度が上がったヘンリーも適任ではないか。
南半球のチームよりも戦い方はオーソドックスで、ベースは強いものの、そこで優位に立てないと苦しくなるチーム。反則の多いチームが負ける展開が予想され、ボールへのしつこい絡みで重圧をかけていきたい。
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