ジョセフHCが繰り返し指摘した「課題」 解消できないまま集大成の年へ

[ 2018年12月30日 11:00 ]

ラグビー日本代表のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ
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 いよいよW杯イヤーが明ける前に、2018年のラグビーシーンを振り返ってみる。試合の劇的場面、スーパープレーがいくつか思い出されるが、「もっとも強く印象に残ったのは?」と自問自答した時、ある一つのフレーズに行き着く。

 「日本の課題は選手の層が薄いことだ」

 日本代表のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ、正確には指揮官の言葉を訳した佐藤秀典通訳の発したフレーズなのだが、同様の発言は9月以降、事あるごとに繰り返された。

 取材メモを洗い出すと、最初にジョセフ・ヘッドコーチが選手層に関する話をしたのは、9月14日だった。6日後の9月20日、W杯開幕まで1年を迎えるのを前に行われた合同取材の場で語られた。その後も10月1日のスコッド発表会見、11月22日のロシア戦のメンバー発表会見、11月27日のシーズン総括会見でも語られた。残念なのはシーズン総括会見でも「課題は解消された」との発言が聞かれなかった点。その状態のまま、集大成の年を迎えることになる。

 ジョセフ・ヘッドコーチが発言を繰り返した狙いは、何だったのだろうか。おそらく一つには「選手層を厚くする=日本全体の選手レベルを上げる」のは、自分の責任ではない、とけん制することにあったと思う。特に秋シーズンはFB松島やフッカー堀江ら負傷中の主力を招集できず。選手起用には苦心の跡が見られた。

 同様の発言は過去にも聞いたことがある。15年8月31日、W杯イングランド大会の最終スコッドを発表したエディー・ジョーンズ前ヘッドコーチも「国際レベルの選手が育つ環境をつくるのは自分の仕事ではない。国際レベルで戦える選手が42人しかいない。そこから選ぶしかない。選手を育てるのは自分の仕事ではない」ときっぱり言い切っている。

 では誰が、選手層を厚くするのか。誰が、その責任者なのか。

 ジョセフ・ヘッドコーチの一連の発言を耳にして、「悔しい」と感じた関係者が、一体どのくらいいただろうか。「薄い」とされた現役選手たち、選手育成の一役を担っているトップリーグや大学チームの関係者、あるいはさらに若年世代の指導者…。何よりエディーの発言から3年以上経った現在も、同じ課題を時のヘッドコーチから指摘されたことを、「大きな絵」を描く人たちはどう感じているのか。

 すでに開幕まで10カ月を切ったW杯に向けて、これからどんな方策を採っても抜本的な解決にはならないだろう。だがラグビーというスポーツが続く限り、5年後、9年後にも開催されるW杯を日本が目指す限り、今から何かを変えようとすることは早くも遅くもないはずだ。(阿部 令)

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2018年12月30日のニュース