張本智和が思い出させた人気漫画の1シーン

[ 2018年12月29日 13:00 ]

グランドファイナル男子シングルス優勝トロフィーを手に笑顔の張本
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 湘北の1年生エース・流川楓が高く放り投げたボールが、ネットを揺らす。高校バスケット界の頂点に君臨する山王工業、沢北栄治(2年)のお株の奪う巧みなシュート。大差をつけられながら、覚醒した流川の活躍で湘北が猛追する。赤木剛憲主将(3年)は荒い呼吸で後輩を見つめ、心の中で叫んだ。「こっ…この男…底が知れん!!」――。

 前置きが長くなったが、これは人気漫画「SLAM DUNK」の1シーン。競技は違えど、記者席から赤木主将の心境になったことが18年に何度もある。主役は、卓球男子の15歳・張本智和(エリートアカデミー)だった。

 1月の全日本選手権の決勝で水谷隼を下して史上最年少優勝。4月のアジア杯では世界1位の樊振東(中国)を撃破し、6月の荻村杯ジャパン・オープンでは馬龍、張継科と中国の五輪王者2人を破って優勝、そして12月、ワールドツアー上位選手が集うグランドファイナルでも決勝で世界4位の林高遠(中国)を粉砕してタイトルを獲得した。

 張本VS中国の試合前、いつも2つの思いが交錯する。「さすがに厳しいか」、「いや、張本ならもしかして…」。相手を威嚇するためではなく、自らを鼓舞するために「チョレイ!」と声を上げ、ライバルを撃破する。そのたびに思うのだ。「こっ…この男…底が知れん!!」と。

 19年1月発表の世界ランクでは現在の5位から、日本男子歴代最高位となる3位に上がる見通しで、世界1位も視野に。来春、中学を卒業して高校1年で4月の世界選手権(ブダペスト)を迎える。15歳での世界一。漫画でも描けないようなストーリーを、張本は実現しようとしている。

 両親や周囲への感謝、感情をコントロールできるようになったことから、18年の漢字に「感」を選んだ。19年のテーマは「今年を超えていきたいから」と「超」に設定。底知れぬポテンシャルを秘めた15歳は、これからも世界に衝撃を与え続ける。(杉本 亮輔)

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2018年12月29日のニュース