鼻で笑われたことも…貴景勝 父とともに人の10倍やった「厳しさだけじゃないからやってこられた」

[ 2018年11月26日 06:57 ]

大相撲九州場所千秋楽 ( 2018年11月25日    福岡国際センター )

父の一哉さん(前列右)、母の純子さん(同左)らと記念写真を撮る貴景勝(撮影・中村 与志隆)
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 小結・貴景勝(22=千賀ノ浦部屋)が平幕・錦木(28=伊勢ノ海部屋)をはたき込み、2敗で並んでいた大関・高安(28=田子ノ浦部屋)が敗れたため、初優勝を飾った。元貴乃花親方(元横綱)の教えを胸に、今場所から移籍した千賀ノ浦部屋で初賜杯。22歳3カ月での初優勝は元横綱・若乃花(当時・若花田)に次ぐ史上6番目の年少記録となった。殊勲、敢闘賞も受賞した若武者は来場所以降、“貴魂”を継承し大関獲りに挑む。

 非凡な才能は父・一哉さん(57)の情熱によって磨かれた。地域で無敵となっていた相撲は、小3から本格的に始めた。「人の10倍ぐらいやりました」と父が徹底指導。週4日の3部練習に加え、相撲クラブが休みの日は芦屋市の自宅で父とぶつかり稽古。近所で坂道ダッシュもしたが、閑静な高級住宅街に似つかわしくない親子の姿に「頭おかしいと思われていたと思う」と振り返る。

 背も普通。食も細い。そんな少年が小6時の作文に「大相撲に入り、横綱になる」と本気で書いた夢を、ある親に「(小柄な体で)何ができんねん」と鼻で笑われた。「悔しかったよ。信じてくれるのは親しかいなかった。見返そう」。父と固く誓った。

 全国大会で鼻をヘシ折られたことが、突き押し相撲の原点となった。「近畿ではサイズが似ている子が多くて、差してがぶる相撲で勝てていた」と父。だが、全国では「(相手が)デカくてビビった」と自身も述懐する。

 どうすれば勝てるのか――。「おまえは差したらアカン」。父の出した答えが、突き押しだった。「空手をやっていたからスッと入れた。左右のパンチを突きにするだけ」。基礎は小3で全国2位となった極真空手。組む相撲を取れば怒鳴られた。「飯食う前に吉野家の駐車場でボコボコ」。得意の形を身につけ、全国屈指の力をつけた。

 父の厳しい指導にも、愛情があった。片道2時間半を運転して出稽古に送迎。食事を終えるまで3時間を要しても、最後まで付き合ってくれた。何よりも、自分と真剣に向き合ってくれた。「自分一人で来た訳じゃない。感じているのは、厳しさだけじゃないからやってこられた」。賜杯は、最高の恩返しとなった。

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2018年11月26日のニュース