渡辺雄太独占インタビュー NBAデビューも「最終地点じゃない」さらなる高みへ

[ 2018年11月13日 07:00 ]

10月27日のサンズ戦でNBAデビューしたグリズリーズの渡辺雄太(AP)
Photo By AP

 日本人2人目のNBA選手となったグリズリーズの渡辺雄太(24)がスポニチ本紙単独インタビューに応じた。下部Gリーグのメンフィス・ハッスルに所属しながら通算45日間の昇格が可能な「ツーウエー契約」を結び、10月27日にNBAデビューを果たしたものの、その後はベンチ登録されていない。NBA2試合目の出場機会を狙う現状を直撃した。

 ――シーズンが始まって、改めてNBAで今後やっていくために必要と感じていることは?

 「やっぱりフィジカルはこれからも継続して鍛えていかなければいけません。あとはシュートの確率が今はGリーグでも悪いので、もっと上げないといけませんね。僕みたいなタイプの選手は、シュートは“決めて当然くらい”にならないと使ってもらえないと思うので、そこはしっかりとやっていかなければいけません」

 ――シュートの精度とフィジカルの強さはこれまでも課題として挙げていた部分で、基本は変わらないと。

 「はい、一緒ですね」

 ――「ツーウエー契約」という契約ですが、個人としては45日という期間をすぐにでも使ってアピールしていきたいのか、それともシーズンいっぱいを利用して経験を積みたいか、どちらでしょう?

 「グリズリーズは長い目で45日間を使おうと考えていると思うので、そこで自分が焦ってもしょうがないですよね。Gリーグでたくさん試合に出させていただいているのも、本当にありがたいこと。そこで経験を積むってことが大事。すぐにでも45日をNBAで使ってほしいというのは別にないです。Gリーグでしっかり経験を積み、シーズンを通じて45日、NBAで使ってもらえればなと思います」

 ――日本のファンは、まだなじみのない契約です。NBAデビューの際は、数日前に“昇格があるかもしれない”という話があったということですが、基本、チーム事情次第でいつ声がかかるか分からないということですね?

 「はい、そうですね。常に準備しておかなければいけません」

 ――準備が難しいといえば難しいですね。

 「難しいですけど、でも、そういう経験ができるのも、このチームに2人だけです。そこは苦に思うことはなく、ありがたい機会だというふうに感じてやっています」

 ――NBAに同行したプレシーズン中の遠征時は“NBAはチームの飛行機からして違うし、ホテルは広い”と話していましたが、Gリーグではホテルやフライトはどうなるんでしょう?

 「飛行機は当然、一般と同じでエコノミーです。少し大きい席を用意してもらったりはしていますけど。ホテルもこの間は相部屋の選手が同行しなかったので1人で優雅に使えましたけど、基本は相部屋です。そういったところは(NBAとは)大きく違いますね」

 ――プレーの面ではGリーグのレベルはどう感じますか?

 「自分が思っていたより高いです。それこそツーウエー契約の選手はどこのチームもレベルが高いですし、元NBA選手だったりだとか、ウチでいうジェボン・カーターみたいに、NBAからとりあえずGリーグに経験を積みに来ていたりだとか、そういう選手もたくさんいます。正直、レベルは自分が思っていた以上に高いです」

 ――NBAに昇格した日の反響は、ご両親や恩師の方の話は伝わってきているんですけど、それ以外もやはり凄かったですか?

 「たくさんの方にメッセージを頂きました。凄かったですね。(返信するのに)時間がかかりました(笑い)」

 ――NBAデビューはうれしい半面、“まだこんなもんじゃない。満足できない”というのはさかんに話していますね。

 「はい、当然、周りの人たちは“デビューおめでとう”と言ってくださるんですけど、自分としては何回も言っているように、あそこが最終地点ではないので。もちろん“おめでとう”という言葉は素直に受け取って、感謝はしましたけど、必要以上に喜んだりとかはしていません」

 ――メンフィスという街は、来る前はどういったイメージでしたか?

 「いや、イメージは何もなかったですね(笑い)。どういうところなのかも分からなくて。一切来たことなかったですし。ブルース音楽の街だとか、それくらいの知識しかなかったです」

 ――グリズリーズでプレーし始めて、街で声をかけられるようになりましたか?

 「はい、そのへんを歩いていたら声をかけられることは多いですね」

 ――カレッジ時代と比べたら自由時間も多いっていう話をプレシーズンの時にしていましたが、普段はどういうふうに過ごしているんですか?

 「うーん、これまでと変わらないです、あまり。勉強していた時間をバスケに使えるようになって、基本的にここ(アリーナ)とアパートメントの行き来だけです。練習して、食べて、寝て、また練習してっていう繰り返しです。バスケに全ての時間を費やせるのはいいですね」

 ――最後になるんですが、カレッジ時代は3ポイントショットを決めた後に中指、薬指、小指と3本の指を立てるのがトレードマークのようになっていました。9日のGリーグ戦で初めてのスリーを決めた後に、あれをやらなかったのが気になりました(笑い)。プロではやらないんですか?

 「いや、まだ1本決めただけだったんで。やっと1本決めただけなので(笑い)。あの程度でセレブレート(お祝い)はできないです」

 ――今後、あのポーズが復活の予定は?

 「1試合で何本か決め出したら…。あれは別に意識してやっているわけではなくて、乗っていった時に体が自然にやっていることなんですよ。まだあれをするほど自分の体は自分のプレーを認めていないということです(笑い)」

 ▽渡辺のNBAデビュー 今季開幕5戦目となった10月27日のホーム・サンズ戦で第4クオーター残り4分31秒から出場。自ら獲得したフリースロー2本を決めるなど2得点2リバウンドをマークした。日本人選手のNB出場は04年サンズの田臥勇太以来14季ぶり2人目の快挙だった。

 ≪大勝に貢献11得点「数字以上の活躍」≫渡辺は11日、ハッスルの本拠地ミシシッピ州サウスヘイブンで行われたGリーグのオースティン・スパーズ戦に先発して23分プレー。第2クオーター終盤の3点シュートやスチールからのダンクなど11得点6リバウンド1アシストで132―86の大勝に貢献し、「数字以上の活躍だったんじゃないか」とうなずいた。今季Gリーグ4試合では平均11・8得点、7・5リバウンド、FG成功率43・9%となっている。

 ◆渡辺 雄太(わたなべ・ゆうた)1994年(平6)10月13日生まれ、香川県出身の24歳。尽誠学園高2、3年でウインターカップ2年連続準優勝。14年9月、ジョージワシントン大入学。4年時にチーム最多の1試合平均16・3得点、6・1リバウンド。今夏のNBAサマーリーグでネッツの選手としてプレーし、7月にグリズリーズとツーウエー契約を締結。2メートル6、93キロ。左利き。

続きを表示

この記事のフォト

2018年11月13日のニュース