“野獣”松本引退も まさかの初戦敗退で東京五輪絶望的

[ 2018年11月5日 05:30 ]

柔道・講道館杯全日本体重別選手権最終日 ( 2018年11月4日    千葉ポートアリーナ )

柔道の講道館杯全日本体重別選手権の1回戦で敗退し、目を閉じる松本
Photo By 共同

 女子57キロ級で12年ロンドン五輪金、16年リオデジャネイロ五輪銅メダルの松本薫(31=ベネシード)が1回戦負けを喫し、現役引退を示唆した。松本はリオ五輪後の同年11月に結婚し、昨年6月には第1子となる女児を出産。アスリートとしての可能性を示す目的もあり戦列復帰したが、今大会の結果により20年東京五輪代表の可能性がほぼ消滅。家族や所属企業との話し合いの上で結論を出す。

 野獣らしい気迫や闘争心はなかった。1回戦で敗れて畳を下り、テレビカメラの前では「しんどかった」と第一声。「必死になって勝ちにいこうとしていなかった」「あまり悔しくない。勝負師としては次のステップに行っているのかなと思う」「負けたので(東京五輪の可能性は)0%」などと言葉を並べると「選択肢は3つ。子づくり、現役続行と、退いて次の道を探すこと」と引退を示唆した。

 愛称の通り、相手を射抜くような鋭い視線でにらみつけ、激しく攻め立てる柔道が持ち味。東京で行われた10年の世界選手権を制して台頭すると、ロンドン五輪では日本勢唯一の金メダルを獲得した。不思議ちゃんぶりや天然発言でも人気を博し、長らく女子柔道界を引っ張ってきた。

 1月には出産を経ても現役にこだわる理由を問われ「一番(のモチベーション)はタスキ。若い子もぜひ私に勝って、東京の切符を獲ってほしい」と思いを明かした。今年は世界選手権を23歳の芳田司(コマツ)、アジア大会を24歳の玉置桃(三井住友海上)が制覇。普段の稽古でも「若い選手が自覚を持って取り組めるようになっている」と後進の成長を感じたことも、自らの役目の終わりを悟る一因となったもようだ。

 結論は「会社や支えてくれる人たちと相談して」とし、期限を決めずに熟考する。最後は一筋の涙を流し、一時代の終焉(しゅうえん)を漂わせた。

○…全日本柔道連盟は大会終了後に強化委員会を開き、来夏の世界選手権(東京)の選考会となるグランドスラム大阪大会(23〜25日、丸善インテックスアリーナ大阪)の代表計56人(各階級4人)を選出した。松本や男子100キロ超級で1回戦負けした斉藤立(東京・国士舘高)は落選。代表漏れした選手について金野潤強化委員長は「来年の世界選手権(出場の可能性)がないので、絶対ではないが東京五輪出場も厳しい。可能性がゼロということはないが、相当厳しいと考えていい」とし、事実上、五輪選考レースから脱落したとの見解を示した。

続きを表示

2018年11月5日のニュース