どん底からはい上がった…1メートル58の小兵・比嘉一貴、初Vへ4打差5位!

[ 2018年10月27日 22:30 ]

男子ゴルフ マイナビABCチャンピオンシップ第3日 ( 2018年10月27日    兵庫県加東市 ABCゴルフ倶楽部=7217ヤード、パー72 )

東京注文<マイナビABC・第3日>2番ティーショットを放つ比嘉一貴(撮影・井垣 忠夫)
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 首位に5打差の6位から出たツアールーキーの比嘉一貴(23)が70とスコアをまとめ、首位に4打差の通算8アンダー、5位と優勝争いに踏みとどまった。プロ12年目の木下裕太(32)が通算12アンダーで韓国のH・W・リュー(37)と首位を併走。首位に8打差の20位から出た今平周吾(26)が首位に4打差の通算8アンダー、5位と2週連続優勝が狙える位置まで上がってきた。

 身長1メートル58。決勝ラウンドに駒を進めた選手の中では最も小柄な比嘉が大仕事をやってのけようとしている。

 「初めて出る試合でコースも分かんなかったんですけど、調子は悪くないんで」1番で16メートルのバーディーパットを沈めた。これで勢いに乗った比嘉は前半だけで4バーディーを奪い、一時は首位に2打差の2位に。11番からの連続ボギーで急減速したが、この大会がプロ転向後日本ツアーわずか6戦目。首位とはまだ4打差。単独3位以上で確定する来季の賞金シードの先に念願のツアー初優勝を思い描きながらの最終日に胸は高鳴る。

 「昔から自信はあったんです。出られる試合があれば。でも痛い目にあっていい勉強になりました」東北福祉大の先輩、松山英樹が優勝した16年日本オープンで14位に入り、アマチュア日本一の称号でもあるローアマを獲得。小柄ながら大いに将来を嘱望されたが、ルーキーイヤーを占う大切なツアー予選会(QT)で昨年、過少申告による失格という大失態を犯した。

 その後は活躍の場を求めてアジアンツアーの2部などを転戦。バングラデシュで開催された4月のBTIオープンでいきなり優勝を飾るなど成果を挙げたが、同時に悲哀も味わった。ホテルの前にはショットガンを持った警備員、食料調達のため200メートル先にあるコンビニに出掛けようとしたら10人もの現地の人々に周りを囲まれた。治安の問題から外食もできず、停電のためホテルのエレベーターが止まり、キャディーバッグを担いで9階の部屋まで何度も階段を往復したこともあった。

 「もう何も苦になりません」この日は14年の日本アマチュア選手権決勝で苦杯を喫した1学年後輩の小木曽と同組で対決した。優勝圏外に消えたかつてのライバルと踏みとどまった自分。そこに自身の成長を感じ取った。

 スポンサー推薦で出場した前週のブリヂストンオープン(千葉・袖ケ浦カンツリークラブ袖ケ浦コース)で9位に入り「前週10位以内」の資格で今大会への出場権を獲得した。地元沖縄で開催される次週のHEIWA・PGM・CHAMPIONSHIP(11月1〜4日、PGMゴルフリゾート沖縄)へはスポンサー推薦による出場が決定。ここでも10位以内に入れば、敬愛する松山も出場を予定している三井住友VISA太平洋マスターズ(11月8〜11日、静岡・太平洋クラブ御殿場コース)への出場権を手にすることができる。3週連続トップ10入りとなればもちろん来季のシード権も確定。アジアンツアーのシード権を獲得するためHEIWA・PGM・CHAMPIONSHIP出場後は再び日本を離れる予定だが「松山さんも出るんで。もしそうなったらそれは幸せな悩みですね」と夢は膨らむ。

 現在賞金ランクは99位。QT失格というどん底からはい上がってきた比嘉は最終日の午後、どんな景色を見ているだろうか。

 ◇比嘉 一貴(ひが・かずき)95年(平7)4月23日生まれの23歳。沖縄県出身。10歳からゴルフを始め、沖縄・本部高から東北福祉大。13年全国高校選手権春季大会で優勝。大学でも16年日本オープンで14位に入り、ローアマを獲得してアマ日本一に。17年11月プロ転向。日本では今年6月に下部ツアー、南秋田CCみちのくチャレンジでプロ初優勝。1メートル58、67キロ。得意クラブは「全部」。師匠は宮里3兄弟の父・宮里優氏。

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2018年10月27日のニュース