伊調 復帰即V!リオ五輪以来の栄冠、五輪5連覇へ大きな一歩

[ 2018年10月15日 05:30 ]

レスリング 全日本女子オープン選手権 ( 2018年10月14日    静岡県三島市民体育館 )

レスリング全日本女子オープン57キロ級準決勝 沢(手前)を攻める伊調(撮影・吉田 剛)
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 57キロ級で伊調馨(34=ALSOK)が2年2カ月ぶりの復帰戦を優勝で飾った。女子初の五輪4連覇を果たした16年リオデジャネイロ五輪以来の実戦復帰。決勝までの3試合を全てフォールとテクニカルフォールで勝利して健在ぶりを示した。日本協会の強化本部長だった栄和人氏から受けたパワハラ問題などもあって葛藤の末に現役続行を決め、12月の全日本選手権の出場資格も自力で獲得。東京五輪での5連覇へとつながる一歩を踏み出した。

 復帰前夜。伊調はしみじみと試合を迎えるのだと感じていた。応援に訪れていた姉・千春さんや恩師と過ごす気の置けない時間。

 「明日試合だね、どう?」

 「まあ楽しみだね」

 「楽しんでやりなよ」

 何げない会話、いつものやりとり。2年ぶりの復帰戦を前に「この感じ懐かしいな。何年繰り返すんだろう」と感慨にふけった。

 ただし全てが以前と同じではなかった。少年のようにばっさりショートヘアで臨んだ復帰戦。試合を見据えて4月から本格練習を始めた体もレスリングもまだ全盛期のものではなかった。「何が100%か分からないが、トータルで6、7割くらい」。初戦は38秒でテクニカルフォール勝ちしたが、準決勝は珍しくタックルを決められて先制を許した。決勝も完勝とはいえ格下の相手に攻め込まれる場面があった。「試合をやっていくうちにどんどん良くなると思ったら、そうでもなかった」。それが2年2カ月のブランクの大きさだった。

 1月に田南部力コーチらが伊調に対する代表でのパワハラを告発。この問題で強化本部長だった栄氏は協会から去った。渦中にいた伊調もずっと葛藤を抱えていた。「この問題が起きて自問自答して“本当にレスリングやりたいのか”と考えた。最終的にやっぱりやりたいと思った。挑戦できるのにしなかったら負けてるのかなと」。パワハラ問題は一大騒動となり、人目を避けホテル暮らしをした時期もあった。「苦しい、やりたい、苦しい、やりたいの繰り返し」と現役続行の決断に至る心境を明かした。

 いつも胸の内にあったのは「レスリングは楽しい」という愛情。そしてもう一つ変わってないものがあった。優勝を決めてもニコリともせず、マットを下りると田南部コーチと神妙な顔で「不用意に下がった」と即席反省会。「もっと強い自分を見せたい」という向上心こそ伊調のレスリング人生の不変の支えだった。

 「年齢も年齢。生半可な気持ちでは目指せないのが五輪」と東京五輪について明言を避けたのも自分の可能性を信じているから。求道者のようにレスリングを突き詰めた先に五輪5連覇がある。

 ≪家族、恩師も応援≫2年2カ月ぶりの復帰戦には父・春行さんや姉・千春さんが青森から駆けつけ、八戸クラブの恩師である沢内和興さんも食い入るように試合を見つめた。沢内さんは「動きは普通かな。相手に合わせて臨機応変にやる。そういう選手だから」と一安心の様子だった。2回戦で対戦の沢は今年の世界ジュニア覇者。この日唯一のポイントを奪ったが「組み手のさばきとか凄い」と力の差を痛感した。

 【伊調のリオ五輪後】

 ▼16年8月 リオ五輪で五輪女子初となる4大会連続金メダル。

 ▼同9月 国民栄誉賞を受賞。

 ▼17年5月 日本スポーツ振興センターのプログラムの一環でカナダで1週間の指導者研修を受ける。

 ▼同9月 現地の協会から招かれ、女性指導者育成のためイラン訪問。

 ▼18年1月1日 ALSOKでアスリートが多く所属する教育・訓練部から広報部へ異動。社内報製作などに従事する一方、少しずつ体を動かし始める。

 ▼同1月18日 田南部氏らが代理人を通じ、内閣府の公益認定等委員会に伊調が栄氏にパワハラを受けたとする告発状を提出。

 ▼同4月 調査で栄氏の伊調らに対するパワハラ行為4件が認定され、同氏が強化本部長を辞任。日体大を拠点に復帰を見据えて3部練習を開始。

 ▼同8月 日本協会の福田富昭会長らと面談して謝罪を受け入れ、同時に全日本女子オープンでの復帰を表明。

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