【上水研一朗氏の目】柔軟性が出た新井 ワンチャンスものにした価値ある連覇

[ 2018年9月25日 16:15 ]

女子70キロ級決勝 フランスのマリエーブ・ガイーを破り2連覇を果たしガッツポーズする新井千鶴
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 昨年の優勝以降、世界からマークされている新井は戦い方に柔軟性が生まれ、得意の形にならなくても勝ちきった。持ちたかったであろう左の釣り手を完全には持てなかったが、大腰にいって相手を浮かせ、すぐさま内股。そして寝技と一連の流れは完璧だった。投げる前までは押されていたが、ワンチャンスをものにしての連覇は非常に価値がある。

 一方で相手のガイーは今後十分に警戒しないといけない相手になる。ノーガードの打ち合いに持って行き、最初の内股を返すなど、勢いと力強さは目を引いた。今回決まった技は当然研究されるので、それを想定して対策する必要がある。フランスは一時期低迷したが、24年のパリ五輪開催が決まり、これからどんどん若手が台頭してくるだろう。ガイーもまだ21歳と若く、1人に絞って対策してもいいほどだ。

 長沢は膝に不安を抱えていたが、準々決勝から立て直して2勝したことは評価できる。ただ、外国勢に対する戦い方は見直す必要がある。まだ技のレパートリーが少なく、疲れた時には疲れたなりの戦い方をするなど工夫が必要になる。例えば不十分な組み手でも何らかの技を出せるかどうか。今回はジョージア選手との4回戦でかなり消耗し、その影響が準々決勝に出た。国際大会では3回戦から準々決勝までのインターバルが短い。ここでいかに早く回復させるかが大切で、それを実体験できたのは今後につながるだろう。

 男子90キロ級は7階級で最も勝つのが難しい階級と言える。今大会も前年や15年王者、世界ランキング1位の選手が早々に敗れた。こんな階級は他にはない。長身選手、筋力がある選手もいれば、バネのある選手もいる。さまざまなタイプに対応しなければ勝ち抜くことはできない。日本全体で底上げを図っていくべきだろう。(東海大体育学部武道学科教授、男子柔道部監督)

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