【上水研一朗氏の目】芳田 粘り強い戦い方が成長の証し

[ 2018年9月23日 13:55 ]

柔道世界選手権女子57キロ級で獲得した金メダルを胸に笑顔で手を振る芳田
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 芳田の代名詞と言えば内股。準決勝の出口戦が山場だったが、技ありを奪ったその得意技は、非の打ちどころがなかった。特徴は2段階で上がってくるところにあり、相手は一度防いでも、二の矢が飛んでくるので止めにくい。足腰に柔軟性があり、跳ね上げ方も独特。普通はあそこまで足が上がるとバランスを崩してしまうものだが、芳田の場合は崩れずに投げきることができる。男子顔負けの切れ味があり、その前に小外刈りで相手の出ばなをくじいて得意技につなげるなど、うまさも光った。

 技の切れる選手は、ややもすると得意技だけに頼りがちだが、序盤戦は寝技を有効に使い、体力の消耗を減らした。昨年から寝技はできていたが、今年はしぶとく仕掛け、ワンチャンスを逃さず、その完成度も高かった。相手が嫌がることを徹底するなど、粘り強い戦いができていたのは成長の証しだ。

 左肩故障明けの橋本は、痛みよりも練習不足が影響した戦いぶりだった。準決勝まで4試合連続で延長戦にもつれ込んだように、本来なら決められる場面で決めきれなかったのが原因。試合勘が鈍り、投げる感覚がずれていたように思う。ただでさえ戻りきっていないスタミナを想像以上に消費し、目のアクシデントもあった決勝は、ほとんど勝負にならなかった。ただし完全アウエーの準決勝は競った試合をよく勝ちきった。今回の状態からすれば、銀メダルでも合格点だろう。

 男女ともこの階級は東京五輪で金メダルが期待される。五輪に出る以上は金を求められるという自覚を持って、今後も代表を争ってほしい。(東海大体育学部武道学科教授、男子柔道部監督)

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