阿部詩 女子52キロ級初出場V、兄一二三と初の兄妹同日金!

[ 2018年9月22日 05:30 ]

柔道 世界選手権第2日 ( 2018年9月21日    アゼルバイジャン・バクー )

兄妹王者!!金メダルを手にポーズをとる世界柔道男子66キロ級連覇の兄・阿部一二三と女子52キロ級初優勝の妹・詩
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 女子52キロ級決勝で初出場の阿部詩(18=兵庫・夙川学院高)が、連覇を狙った志々目愛(24=了徳寺学園職)を延長の末に内股で下し、初優勝した。阿部は5試合オール一本勝ち。20年東京五輪の代表争いでも先頭に躍り出た。男子66キロ級に出場した阿部一二三(21=日体大)も決勝でセリジャノフ(カザフスタン)に同じ内股で一本勝ちし、連覇を達成。兄妹同日Vは柔道史上初の快挙となった。

 兄・一二三が初めて世界王者になったその時、詩はスマートフォンにかじりついていた。大会が行われたブダペストに派遣されていた親友、女子78キロ超級の素根輝(福岡・南筑高)の“実況中継”に耳を傾け、深夜の自宅で父・浩二さん、母・愛さんと手を取り合って喜んだ。そして来年こそと誓った初の大舞台。兄と同様、一気に頂点に上り詰めた。

 試合後は再び会場に舞い戻り、兄の連覇を見届けるとガッツポーズ。「自分が先に優勝できてうれしかったけど、お兄ちゃんの優勝もうれしかった」と、ようやく心の底からの笑顔がはじけた。

 決勝の志々目戦は規定の4分間で一度、相手に3つ目の指導が飛んだ。「一瞬、勝ったという気持ちがあった」と言うが、すぐに取り消されて試合再開。心の隙が生まれてもおかしくない状況だったが、18歳とは思えない感情の制御で、切り替えた。延長戦は内股で完璧な一本。兄はできなかったオール一本Vに「やってやりました」と満面の笑みを浮かべた。

 小学校時代の2人を指導し、今も詩を指導する夙川学院高の松本純一郎監督は「一二三は努力型、詩は才能型」と表現する。小さい頃は練習嫌いだったが、一度手本を見せただけで簡単に同じ技を習得してみせた妹。中学に上がってからは兄と同じように練習の虫となり持って生まれた才能はさらに伸びた。

 673日後の2020年7月26日、東京五輪の柔道競技第2日。兄の背中を追ってきた妹が先に決勝の畳に上がり、最後は2人で表彰台の真ん中に立つ。「(五輪に)また一歩近づいた。このまま突っ走っていく」。日本柔道界に新たに打ち立てた金字塔は、2年後に向けての最高の予行演習だった。

 ▼柔道世界選手権での日本勢きょうだい優勝 93年ハミルトン大会(カナダ)の男子65キロ級で中村行成、同86キロ級で佳央が優勝しており、同一大会で初の兄弟優勝を達成。97年パリ大会の男子71キロ級では中村兼三が優勝しており、3兄弟全員が優勝している。また、女子70キロ級の上野雅恵(01、03年優勝)と同63キロ級の順恵(09、10年優勝)は同一大会への出場はなかったが、姉妹制覇を果たしている。

 ▼増地克之・女子日本代表監督 阿部は初戦から気持ちを強く持ち、隙のない柔道だった。本当に頼もしい存在が出てきた。

 ◆阿部 詩(あべ・うた)2000年(平12)7月14日生まれ、兵庫県神戸市出身の18歳。5歳で柔道を始め、兵庫・夙川学院中で15年に全中優勝。17年2月のグランプリ・デュッセルドルフで、ツアー最年少となる16歳で優勝。昨年12月のGS東京大会では兄・一二三と兄妹同時優勝を飾った。得意技は内股、袖釣り込み腰。兵庫・夙川学院高3年で、来年4月から兄と同じ日体大に進学予定。1メートル58。

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