アジア大会、不便さをカバーしたおもてなしの心…1年後のラグビーW杯でも

[ 2018年9月20日 10:00 ]

ジャカルタアジア大会の閉会式で盛り上がるボランティア(共同)
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 閉幕から、はや2週間以上が経過したインドネシアのジャカルタとパレンバンで開催されたアジア大会。75個の金メダルを獲得した日本勢の活躍とともに報じられたのが、不手際の多かった運営面や施設面の話題だった。

 開幕前からサッカー男子の組み合わせで不備が明るみになり、開幕してからも水泳場やソフトボール会場、レスリング会場での機材トラブル、7人制ラグビー女子の組み合わせの二転三転など、この手の話題には事欠かなかった。大会終盤にはジョコ大統領が国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長との会談後、2032年の五輪招致を表明したが、現地で実際に取材して、実現は容易ではないだろうと感じている。

 一方でどういうわけか、インドネシアという国に対してはもちろん、現地の人や大会全体を見れば悪い印象は残らなかった。こちらも大会中によく論評されたが、鷹揚な国民性が寄与している面は大いにあると感じた。大会運営のボランティア(実際には日当が出ていたが)は皆、人当たりが良く、世話好きで親切だった。ほぼ毎日ホテルと競技会場の往復だけだったが、ホテルのスタッフもタクシーのドライバーも、穏やかな人が多かったように思う。少々の悪印象は人の力でカバーできる。その証左のような大会だった。

 帰国後、その思いを確信に変える「キックオフ宣言」を読んだ。8月19日、ラグビーW杯の開催会場の一つ、岩手県の釜石鵜住居復興スタジアムで行われた、オープニングイベントで地元高校2年の洞口留伊さんが読んだものだ。

 とにかく感動した。日本中、世界中からの復興支援に感謝し、その恩返しとして、W杯で釜石を訪れる人々をおもてなししたい。洞口さんの宣言文には、そんな純真な気持ちが心に響いた。

 釜石には2度、ラグビーの取材で訪れたことがある。いずれも11年3月の東日本大震災後だ。1度はレンタカー、1度は公共交通機関を利用したが、残念ながら東京から訪ねるには、あまりに遠すぎた。宿泊施設も、W杯を開催するには不足している。日本戦と並んで人気を博す釜石での試合だが、来場者は少なからず、不便を感じることになるだろう。

 それでも直接運営に関わる人だけでなく、町全体で人々が心を込めれば、少々の不便による悪い印象は吹き飛ばせる。アジア大会はそれを証明してくれた。何も釜石に限ったことではない。熊谷ラグビー場や大分銀行ドームも駅からはバスで数十分の距離にある。世界規模の大会だから、多少のトラブルは不可避だろう。それでも大会は成功できる。日本中、世界中から訪れるファンを笑顔で帰すことはできる。

 ラグビーW杯開幕まであと1年。ついつい不平不満を漏らす私自身に自戒を込めて。(阿部 令)

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