リーチ「まとまればデカい相手も倒せる それを証明したい」 ラグビーW杯日本大会まであと1年

[ 2018年9月20日 05:37 ]

ラグビーW杯日本大会に向けて力強いガッツポーズを見せるリーチ・マイケル(右)とスポニチ本紙評論家の菊谷崇氏(撮影・尾崎 有希)
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 【菊谷×リーチ Wキャプテントーク】第9回ラグビーW杯日本大会開幕まで、きょう20日であと1年となった。アジアで初、伝統国以外で初のW杯で、開催国の日本は悲願の決勝トーナメント進出を狙う。11年大会で主将を務めた本紙評論家の菊谷崇氏(38)と、同大会でW杯デビューし、前回15年大会で主将を務めたリーチ・マイケル(29=東芝)。桜の闘将の系譜を紡いできた2人が、W杯への思いを語り合った。 (取材・構成 倉世古 洋平、阿部 令)

 菊谷氏(以下、菊) 初代表は08年だっけ?

 リーチ(以下、リ) 熊谷でのセレクション合宿が初めてでした。大学のブレザーを着ていって、脱いだらシャツの汗染みが胸まで来てた(笑い)。そのくらい緊張してました。

 菊 それで11月の米国戦で初キャップだったけど、合宿と米国戦の間に大学(東海大)の試合に出たよね。本来は代表優先だけど、大学の順位にも関わるので、そっちにも出ると。そこまでハードワークする?と思ったよ。

 リ 100―0くらいで勝ちました。

 菊 その結果は今、初めて知った。出る必要あったの?(笑い)

 リ 菊さんのことは高校(札幌山の手高)の時から見てました。トヨタ自動車―東芝戦が札幌であって、僕はボールボーイをやった。

 菊 リーチが初キャップを獲得した米国戦は、僕のキャプテン初陣。他にも新しい選手がたくさん入ってきたから、若い選手の1人という感じだったな。最初は未成年で、お酒も飲めなかったし。

 リ 今はしっかり飲めるようになりました。

 菊 よく一緒に筋力トレーニングもしたね。

 リ 菊さんと遠藤(幸佑=元トヨタ自動車)さんの3人でやりましたね。当時はまだ進路が決まってなかったけど、結構(進路希望は)トヨタ自動車寄りだったんですよね。

 菊 次の年のサモア遠征で、初めてホテルの同部屋になったね。

 リ 当時はまだガラケーでお金もない。菊さんが買ってくれたWi―Fiを使って、付き合っていた彼女、今の奥さんなんですけどメールをしてました。

 菊 僕にとっては主将としてスタートの時期だから記憶が濃厚。リーチは今は主将を務めて日本の中心選手だからギャップを感じる。でも当時から活躍するぞ、という意志が強かった。そういう意味ではずば抜けていた。上を狙うため、自分はどうしたらいいか、何が必要かを考えていた。

 リ 菊さんは最初の頃からご飯に誘ってくれたり、積極的に話しかけてくれた。若い選手はそれで安心する。だから僕も新しく代表に入った選手に積極的に話しかけたり、食事に誘うようにしてます。

 菊 僕も箕内(拓郎=03、07年W杯主将)さんを見てきた。背中で語る主将だなと思っていたけど、最近話したら「いや、みんなしっかりしていたから、特に何も考えてなかったよ」と言われて、マジかよ、と(笑い)。

 菊 残り1年で、そろそろメンバーを固定していく時期。W杯代表入りへ当落線上の選手もいるので、そういう選手が気持ちよくチャレンジできる環境をつくらないといけない。

 リ ふるい落としは、かなりつらい。一緒に頑張ってきて、最後の最後に落ちるのは涙が出ます。記憶に残っているのは15年W杯前の村田毅(現・日野)。彼はエディー(・ジョーンズ前ヘッドコーチ)に厳しく絞られて、体重を10キロ増やしたのに、最後の最後に落選。かなりつらかった。

 菊 そういう選手の思いも背負うことでチームがピリッとするし、次のステップに進める。その後にはレギュラー争いもあるので、本当に過酷な時間だね。

 リ でもメンバーが決まるとチームが締まる。スイッチが入って練習の質が高まります。

 菊 ニュージーランド人として11年大会に出て、19年大会は日本人として出る(13年に日本国籍を取得)。これって凄いことだよね。超スペシャルだよ。

 リ 来年はちょうど、ニュージーランドで15年、日本に出てきて15年になる節目の年。運命を感じるし、いろんな感情が湧くと思います。日本のラグビーで育ちましたから。根性練習、腕立てとか、山を走ったり、全体責任で丸刈りとか、ニュージーランドにいたら絶対にない経験をした。感情的になりすぎると良くないけど、感情が出た方が力が出る。

 菊 次の年は五輪とパラリンピックもあるし、W杯で日本がしっかり戦えたら20年にもつながる。19、20年は世界に向けて日本のスポーツがしっかり結果を示せる機会だと思う。

 菊 W杯も楽しみだけど、今年11月オールブラックス(ニュージーランド)、イングランドとの対戦も楽しみ。

 リ 今の日本代表は11年W杯でオールブラックスと対戦した時と全然違う。あの時は世界トップとの対戦経験ゼロで挑んだ。でも15年以降はオーストラリアやアイルランドと対戦してスーパーラグビーも経験した。経験値が上がっているので、体が小さいとか言い訳できない。最大限の準備をして、勝てば自信がつく。たとえ負けたとしても新しい課題が出てくる。

 菊 11年までは未知の国と試合をするようなものだったからね。テレビでしか見たことがないオールブラックスと対戦して、仮想フランスが欧州6カ国対抗でボロ負けしているイタリアだった。そういう意味で15年に結果を出して、ビッグマッチをたくさん組めるようになり、いいプロセスを踏んでいると思う。

 菊 じゃあ最後に、W杯で日本のファンにどんな姿を見せたい?

 リ メンタルの強さ、まとまればデカい相手も倒せる。それを証明したい。あとは勝つ。勝って勝って勝って、勝つことが大事。ラグビー界だけでなく、スポーツ界全体に向けて見せたいと思います。

 ◆リーチ・マイケル 1988年10月7日生まれ、ニュージーランド出身の29歳。5歳でラグビーを始め、15歳で来日。08年11月の米国戦で日本代表初キャップを獲得。東芝入りした11年W杯では全4試合に先発。13年に日本国籍を取得し、15年W杯では主将として3勝1敗の躍進をけん引。1メートル90、110キロ。通算キャップ56。ポジションはフランカー、No・8。

 ◆菊谷 崇(きくたに・たかし)1980年(昭55)2月24日生まれ、奈良県出身の38歳。御所工高でラグビーを始め、大体大を経て02年トヨタ自動車入り。05年11月のスペイン戦で代表初キャップを獲得。08年11月から11年W杯まで主将を務めた。サラセンズ(英国)を経て14年にキヤノン入りし、昨季限りで引退。通算68キャップ。主なポジションはNo・8。

 ▽11年W杯ニュージーランド大会 日本は初戦で世界ランク4位のフランスに21―47で敗戦も、後半27分まで4点差に食らいつくなど健闘した。しかし主力の一部を温存した続くニュージーランド戦で7―83と大敗。5連勝中だったトンガには18―31で敗れ、1次リーグ敗退が決定した。最後のカナダ戦は23―23で引き分け、1分け3敗で大会を終えた。菊谷氏とリーチは全4試合に先発。リーチは1トライを記録し、好タックルでトライを防いだトンガ戦ではマン・オブ・ザ・マッチに選出された。

▽15年W杯イングランド大会 日本は初戦で95、07年覇者の南アフリカと対戦。FB五郎丸のトライなどで接戦に持ち込むと、3点を追う試合終了間際のゴール前ペナルティーで、リーチ主将が首脳陣のPG指示を無視してスクラムを選択。これがWTBヘスケスの逆転トライにつながり、34―32で勝利。世紀の番狂わせと称賛された。その後、スコットランド戦は大敗も、サモア、米国に連勝。しかし勝ち点で及ばず、3勝しながら1次リーグで敗退する史上初のチームとなった。

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