進退懸ける稀勢の里、9場所ぶりの白星発進に「集中してやりました」

[ 2018年9月10日 05:30 ]

大相撲秋場所初日   ◯稀勢の里―勢● ( 2018年9月9日    両国国技館 )

懸賞金を持ってフッと息を吐く稀勢の里(撮影・大塚 徹)
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 和製横綱が鬼門を突破した。今年初場所以来、4場所ぶり出場となった横綱・稀勢の里(32=田子ノ浦部屋)は東前頭筆頭の勢(31=伊勢ノ海部屋)を寄り切り、237日ぶりの白星を挙げた。出場場所の初日は4連敗中だったが、進退を懸ける場所で、新横綱優勝を飾った昨年春場所以来、9場所ぶりの白星発進。大関獲りの関脇・御嶽海(25=出羽海部屋)も幸先よく白星を挙げた。

 ようやく悪い流れを断ち切った。初場所2日目以来の今年2勝目を挙げた稀勢の里は、大歓声の中、目を閉じて息を整えた。支度部屋では多くの質問が浴びせられたが、取組に関しては「集中してやりました」と答えただけ。口数の少なさは、いつも通りだった。

 相撲内容も“いつも通り”に戻った。勢とは昨年名古屋場所5日目以来の対戦。前回は小手投げに屈し、左足首を負傷して休場に追い込まれていた。同じ過ちは繰り返さない。しっかり当たって左下手を引くと、圧力をかけて出た。相手が引くと体を預けるように出て寄り切り。通算15勝1敗の相手を危なげなく退けた。

 8場所連続休場を経ての土俵。進退を懸けて臨む横綱に迷いはなかった。八角理事長(元横綱・北勝海)は「開き直っていったんだと思う。とにかく当たるんだという気持ちが強かったのではないか」と分析。7場所連続全休を経験している貴乃花親方(元横綱)は「緊張しながらも、いい相撲だった。“やってやるぞ”というのが見えた」とにじみ出る闘争心を感じ取っていた。

 師匠の田子ノ浦親方(元幕内・隆の鶴)は「(稀勢の里が)集中したいと言っている」という理由で、この日から朝稽古を非公開とした。周囲の後押しに応えるように快勝したが、まだ15分の1を終えただけだ。「今日は今日で、明日は明日。やることをしっかりやって、自分の力を出すだけ。それだけ」。一つの白星に心を乱すことなく、稀勢の里は引退と隣り合わせの復活ロードを進んでいく。 (佐藤 博之)

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