体操女子・宮川、協会からパワハラ受けた 18歳「勇気」の主張

[ 2018年8月30日 05:30 ]

会見を行う宮川(撮影・尾崎 有希)
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 覚悟の主張だ。体操女子の宮川紗江(18)が29日、都内で会見を開き、日本協会の塚原千恵子・女子強化本部長(71)と夫の光男副会長(70)からパワーハラスメントを受けていたと明かした。元コーチの速見佑斗氏(34)が宮川への暴力行為により、無期限登録抹消などの処分を受けたことに端を発した今回の問題は大騒動に。日本協会も会見を行い速見氏の暴力行為を時系列で説明し、宮川の主張にはコメントを避けた。

 髪をまとめ、ルージュを引き、パンツスーツで会見に臨んだ18歳は、覚悟を決めていた。「まだ18年しか生きていないが、人生の中で一番の勇気を出して、ここに立っています」。冒頭のあいさつで速見氏を擁護した後、口にしたのは衝撃の内容だった。協会の一部幹部からのパワーハラスメント。速見氏に処分が下る前の7月15日、宮川は塚原夫妻に味の素ナショナルトレセン(NTC)内の小部屋に呼ばれた。

 「(速見氏に)暴力の話が出ている。あのコーチはダメ。だからあなたは伸びない。私なら速見の100倍教えられる」と詰問された宮川は、暴力行為の証言を求められたが拒否。「先生を家族も信頼して一緒にやっていく」と答えると、「家族でどうかしている、宗教みたいだと高圧的に言われた。家族もコーチも否定され、おかしくなってしまいそうだった」と明かした。

 塚原本部長に対し、最初に恐怖を感じたのは2年前の冬。日本協会の「2020東京五輪特別強化選手」制度がスタートしたが、強化方針が具体的でないという理由で宮川は名を連ねず。すると16年12月19日、同強化本部長から宮川の自宅に電話があり、「2020に申し込みをしないと協会として協力できなくなる。五輪にも出られなくなるわよ」と言われた。脅迫に近い内容のため、コーチや家族と相談し、日付と内容をメモした。

 また、「2020――」に入らなかったことで、NTCの使用も制限された。今年6月に名を連ねたが、今は脱退を強く要望。塚原夫妻に関係が深い朝日生命への移籍を、関係者から勧められたこともあったという。宮川は「最初から速見コーチの過去の暴力を理由に、速見コーチを排除して朝日生命に入れる目的なんだと確信に変わった」とし、「権力を使った暴力だと感じる。これらのパワハラの事実を認めていただきたいと切に願います」と話した。

 速見氏の処分に端を発する今回の問題。コーチ、宮川ともに1年以上前に暴力行為があったことは認め、宮川は「暴力をしてしまったことは許されることではなかった」とする一方で、「いくらなんでも(処分が)重すぎる」、「体操女子を変えるには本部長が代わるとか、何か手を打つことを考えないといけないのかな」と訴えた。他にも同様にNTCの使用制限を受けている選手がいるという。

 大目標の20年東京五輪を前に、選手生命を賭した告発。「東京五輪は、これまで通り金メダルを目指して練習していくつもり。一から速見コーチとともにやり直していきたい」。幹部のパワハラについて、日本協会はコメントを避けた。東京五輪で注目の体操で起きた大騒動は、どこに着地するのだろうか。

 【体操パワハラ騒動経過】
 ▼7月11日 日本協会に速見佑斗氏の暴力行為に関する通報が入る。
 ▼22日 日本協会によるNTCでのパワハラの事実調査。
 ▼23日 第1回懲戒委員会を開催。
 ▼30日 日本協会が速見氏に聞き取り調査。同席したのは協会の弁護士。速見氏はパワハラの事実を認め、反省。
 ▼8月8日 第2回懲戒委員会を開催し、常務理事会で処分を決議。
 ▼13日 日本協会が速見氏に懲戒処分通知を発送。
 ▼15日 日本協会が速見氏の処分を報道各社に発表。
 ▼16日 日本協会の渡辺事務局長が、宮川の保護者と面談。今後の指導、その他対応を協議。
 ▼21日 宮川が代理人弁護士を通じて直筆文書を発表。「パワハラされたと感じていません」などとし、指導継続を希望した。
 ▼24日 日本協会が経過説明の文書を報道各社に発表。速見氏から、東京地裁に指導者の地位保全を求める仮処分の申し立てがあったことも発表した。
 ▼27日 世界選手権代表候補の合宿がスタート。宮川は不参加。
 ▼29日 宮川が会見。速見氏の処分軽減を求めるとともに、日本協会の塚原夫妻によるパワハラを主張。日本協会も会見し、速見氏の暴行歴を時系列で説明した。

 ◆宮川 紗江(みやかわ・さえ)1999年(平11)9月10日生まれ、東京都出身の18歳。2歳で体操を始め、小学5年から速見佑斗氏の指導を受ける。15、17年世界選手権、16年リオデジャネイロ五輪代表。今年5月からレインボーと契約してプロ活動を行っていたが、契約解除。1メートル49、41キロ。

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