稀勢の里 復活へ今こそ原点回帰を―がむしゃらに、背中に砂をつける横綱が見たい

[ 2018年8月13日 10:10 ]

巡業で雲龍型の土俵入りを披露する稀勢の里
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 26日間に及ぶ大相撲の夏巡業が、半分以上を消化し、残り11日となった。7月の名古屋場所は、3横綱全てと新大関の栃ノ心が休場。皆勤した豪栄道、高安の両大関も、それぞれ10勝、9勝に終わった。横綱、大関陣にとって、夏巡業は復活へ向けての大事な調整の場になるが、ここまではほとんどが思うような稽古ができていない。

 12日の仙台での興行まで、土俵上で相撲を取ったのは、稀勢の里と高安だけ。巡業の序盤を右膝の炎症のため休場していた高安は、合流した8日の青山学院での興行からコンスタントに土俵に上がっているが、稀勢の里は6日の長野・下諏訪町、7日の埼玉・所沢市の興行で、平幕相手に14番ずつ取っただけだ。

 8場所連続休場中の稀勢の里は、これ以上の休場は許されない状況に追い込まれている。自身は次に出る場所で進退を懸けることも口にしているが、スローペースと言わざるを得ない調整ぶりだ。誤算となったのが、左足の裏に負った負傷だ。直に土俵の砂に触れると悪化してしまう可能性もあるだけに、朝稽古ではここ数日、土俵下での基礎運動に終始している。取組からは外れているものの、横綱土俵入りはかかと部分にテーピングを巻いて務めている。「(12日の)龍ケ崎の時が一番ひどかった」と言うように、中学までを過ごした故郷で相撲を取る稽古ができなかったのは、そういう理由からだった。

 運命の秋場所まで1カ月を切った。左足裏の状態については「だいぶよくなってきた」と話しているだけに、巡業中には再び相撲を取る稽古はできる見通しだ。そこで期待したいのは、上位の力士を相手に番数をこなすことだ。昨年春場所で左大胸筋などを負傷して以降、巡業では本場所で対戦しない力士を相手にすることがほとんどだった。感覚を取り戻そうというのが理由だろうが、それでは現状の力を把握するのは難しいだろう。八角理事長(元横綱・北勝海)も「夏場所でガンガンやらないといけない。土俵を占拠してもいい」と奮起を促していたように、がむしゃらになることを願う。

 先代の師匠である元鳴戸親方(元横綱・隆の里)の厳しい指導の下で力をつけてきた横綱だけに、今こそ原点に帰ってほしい。誰もが求めている和製横綱の復活。横綱のプライドをかなぐり捨て、背中に砂をつける稀勢の里の姿が見てみたい。(佐藤 博之)

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2018年8月13日のニュース