eスポーツが五輪競技となる日へ…必要な社会全体のコンセンサス作り

[ 2018年8月11日 13:45 ]

9日、記者会見でポーズをとる(左から)日本eスポーツ連合の岡村秀樹会長と日本代表の杉村直紀、相原翼、赤坂哲郎の各選手
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 「理解をしていただきたく努力をしていく」。8月9日に東京都千代田区の日本記者クラブで行われた日本eスポーツ連合(JeSU)主催の記者会見。岡村秀樹会長はeスポーツがスポーツの一つとして認められるために、あらゆる方面からさまざまな努力をしていく覚悟を示した。

 eスポーツとはエレクトロニック・スポーツの略称。つまり、コンピューターゲームを通じて争う競技のことを言う。コンピューターゲームのタイトルそのものは、例えばサッカーや野球のようなスポーツゲームであることが前提だと思いきや、そうではない。あくまでゲームで競うことを一つの「スポーツ」として捉えた言葉だ。まだまだ認知度は高いとは言えないが、18日に開幕するアジア大会(ジャカルタなど)では公開競技として実施され、22年の杭州大会で正式競技となる。

 eスポーツの人気や影響力、市場規模などは決して小さくなく、だからこそ国際オリンピック委員会(IOC)も7月にはeスポーツに関するフォーラムをスイス・ローザンヌで初開催。24年パリ五輪での採用も取りざたされるが、五輪の1競技として行われるための意義は、正直に言って現状では見えてこない。

 すでに世界規模の大会は各国で開催されており、賞金総額が20億円に達するような大会も存在するというeスポーツ。屋内の大会会場にはあふれんばかりの観客が詰めかけている写真を何枚も見た。しかし五輪の1競技となればあらゆる制限を受け、自由度は失われる。当然、五輪では高額の賞金が出ることもない。

 IOCには若年層の五輪離れという課題があり、eスポーツ側には冒頭に取り上げた岡村会長の発言ににじむような、ゲームそのものの社会的地位向上への渇望があるように思う。eスポーツが五輪競技になればウィンウィンの関係を築けるだろうが、目的のために議論を深めず結合しても、良い結果は生まない。

 近代五輪も草創期には釣りや絵画などの芸術競技が採用されている。当時の人たちが現在の五輪で極東発祥の柔道やテコンドーが正式競技として行われていることを知れば、「けしからん!」となるかも知れない。その観点からも、数年後にeスポーツが五輪競技になっている可能性は、決して低くない。それが議論をし尽くし、社会全般のコンセンサスをとっての結果であることを望みたい。(阿部 令)

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