出場停止から2年 桃田 日本男子初 バドミントンで金メダル「感謝の気持ちが勝因」

[ 2018年8月6日 05:30 ]

バドミントン世界選手権最終日 ( 2018年8月5日    中国・南京 )

表彰式で金メダルを掲げる桃田
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 男子シングルス決勝で、3年ぶり出場の世界ランキング7位の桃田賢斗(23=NTT東日本)が同3位の石宇奇(22=中国)に21―11、21―13の2―0で圧勝し、五輪、世界選手権を通じて日本男子初の金メダルを獲得した。違法賭博問題による出場停止処分で16年リオデジャネイロ五輪に出場できなかった若きエースは、謹慎前よりも強くなった姿をアピール。あと2年に迫った20年東京五輪へ向け、完全復活を世界に知らしめた。

 世界一が決まった瞬間は、あまりに静かだった。最後のショットはネットに当たって相手コートに落下。派手なガッツポーズも歓喜の雄叫びも、桃田にはない。熱くなる必要すらないほどの圧倒的な勝利だった。「しっかり足を動かし、相手の決め球をとったことが相手のプレッシャーになった」。

 石宇奇のスマッシュを次々と拾った。体力をじわじわと奪い、気持ちをなえさせる。隙が生まれたところを攻めた。第1ゲームを13―11から8連続得点で奪うと、第2ゲームも終始リードして、わずか49分で決着させた。

 実は腹筋の痛みを抱えていた。試合後、日本代表の朴監督は「こっちに来て最初の全力の練習で痛めた」と明かした。3回戦までは激しい動きを封印し、準々決勝からは痛み止めを服用。マッチポイントまであと1点のラリー中、体は悲鳴を上げていたが、弱気な姿は見せなかった。

 16年4月、違法カジノ店に通ったことが発覚し、桃田のバドミントン人生は大きく狂った。無期限の出場停止処分となり、メダルが期待されていたリオ五輪を棒に振った。

 「最初は周りの目を気にしながら生活していた。あまり人に会いたくないというか…」とふさぎ込んだ。だが、バドミントンからは逃げなかった。所属先のNTT東日本による出勤停止期間が明け、須賀隆弘総監督に「今でもバドミントンは好きか」と聞かれると、迷わず「好きです」と返答。午前中は会社業務に就き、午後に練習の毎日。試合には出られない。それでも「いつか結果を出して裏切ってしまった方に恩返しがしたい」と黙々とマシンの上を走り、地道に体づくりに励んだ。

 技術先行から、フィジカルを生かすプレースタイルになった。以前は子供の憧れの存在を目指し明るく染めていた髪も、黒に変えた。「コートの中の立ち居振る舞いや言動で手本となる選手になりたい」。派手な見かけよりも中身を大事にする大人になった。

 代表に復帰した今季は優勝を重ね、世界一に駆け上がった。「戻ってきたというより、自分を超えて進化している最中。もっともっとレベルアップできる」。そして復帰後欠かさず語るフレーズを口にした。「この優勝は一人ではできない。感謝の気持ちが勝因」。この気持ちを忘れない限り、桃田はまだ強くなれる。

 ◆桃田 賢斗(ももた・けんと)1994年(平6)9月1日生まれ、香川県出身の23歳。7歳でバドミントンを始める。福島・富岡高3年時の12年に世界ジュニア選手権優勝。15年世界選手権男子シングルスで、日本初のメダルとなる3位。16年4月に発覚した違法賭博問題による出場停止処分でリオ五輪出場を逃した。左利き。1メートル75、68キロ。

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