阿炎 恩人鶴竜から金星 泣いた笑った元付け人「夢中だった」

[ 2018年7月13日 05:30 ]

大相撲名古屋場所5日目 ( 2018年7月12日    ドルフィンズアリーナ )

鶴竜(左)の口を直撃する張り手も飛び出し、突き出しで金星を挙げた阿炎(撮影・椎名 航)
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 東前頭3枚目の阿炎が、付け人時代の恩人から感謝の白星を挙げた。結びで横綱・鶴竜を突き出し、先場所の白鵬戦に続いて2度目の金星を獲得。支度部屋に引き揚げる際には感激の涙を流した。新大関・栃ノ心と関脇・御嶽海が全勝をキープ。カド番大関の高安は1敗を守った。

 波乱を起こした阿炎には手荒い祝福が待っていた。土俵を下りる途中、アッパー気味の角度から座布団が顔面を直撃。「名古屋の座布団は軽いですね。重かったらやばかった」。それでも、勝利の味は変わらない。目を赤くして戻った支度部屋では「涙を我慢するので精いっぱい。花道を過ぎて泣いちゃった。人前で泣かなかったので良かった」と照れくさそうに笑った。

 2度目の横綱・鶴竜戦。場所前の三番稽古は7戦全敗だった。「攻めて負けたら仕方ない。前に出ることだけ考えた」。覚悟を決めて踏み込んだが、圧力に負けて後退した。「夢中だった。ずっと我慢したのは覚えている」。ところが、俵に足がかかる寸前で、相手が引き、形勢逆転。悪癖を見逃さず、一気に突き出した。先場所の白鵬戦に続く金星に「2つとも違う意味のうれしさ」と振り返った。

 「付け人時代がなければ相撲をやめていたかもしれない」。再十両を目前にした16年名古屋場所。幕下4枚目で6連敗し、どん底を味わった。その2場所後、鶴竜の付け人となった。1年間、大きな背中から「勝っても負けても変わらない心の強さ」を学び、巡業では横綱の指導で腕立て伏せを1日300回行った。転機だった。

 感謝の気持ちは忘れない。支度部屋では「正座しちゃいます」と、横綱に対する敬意を表現。その一方で、最も印象に残った言葉を聞かれると「焼き肉屋で野菜を食う意味が分からない、と言っていたので、自分もそれ(野菜はオーダーしない)をやっています」と笑った。涙から笑顔。最後は24歳のいつもの姿に戻っていた。

 ▼付け人 関取の身の回りの世話などをする幕下以下の力士。十両は2、3人、幕内力士には3、4人がつく。綱締めなどもある横綱の場合は8〜10人が必要となるため、一門の他の部屋から力士を借りるケースも多い。鶴竜の所属する井筒部屋は力士が少ないため同じ時津風一門だった錣山部屋などが協力していた。

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