錦織も才能を絶賛する24歳「その男、キリオスにつき」

[ 2018年7月7日 09:00 ]

錦織も才能を絶賛するキリオス(AP)
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 犬も歩けば棒に当たる。キリオスがいれば何かが起こる。

 彼の周りには温泉街の湯気のごとくトラブルがもくもく巻き起こり、何百キロ先からでも帰ってくる伝書鳩のように確実にハプニングが舞い込む。錦織が3回戦で激突するニック・キリオス(24=オーストラリア)はそんな選手である。

 今大会も話題に事欠かない。まず1回戦では時速217キロのサービスエースがボールガールの腕を直撃した。「音を聞いたときはスコアボードに当たったんだろうと思った」とキリオスも驚いたが、泣き出したボールガールはそのまま退場していった。荒っぽく見えて心根は優しい(はずの)キリオス。「俺も泣きそうだった」と悲しそうに女の子の背中を見送った。

 2回戦では今度は笑えるやり取りを展開した。フットフォールトを取られた場面で「なんで打った後に言うんだ?」と主審にいちゃもん。しかしここは主審の見事なカウンターを浴びた。「それが仕事だから。打つまではコールできないだろ」。至極まっとうな切り返しにぐうの音も出ず、一本取られたぜと納得の笑みを浮かべるしかなかった。

 加えてフットフォールトのルールをきちんと知らなかったようで、直後のセット間では主審に問いただし、その場で身ぶり手ぶりのレッスンを受けた。創立150周年を迎えたウィンブルドン。果たして試合中にルール講習を受けたトップ選手なんていたのだろうか。

 そんなこんなもあって、2回戦の後には13年大会女王のマリオン・バルトリさん(フランス)がBBCのラジオでキリオスを厳しく評価した。「いつまで経っても成長できない」「才能にあふれているのに哀れ」。よせばいいのにキリオスはすぐさま自らのインスタグラムで反論して火に油を注いだ。

 一事が万事こんな調子。ちなみにウィンブルドン前の大会では、ペットボトルを使ってわいせつなジェスチャーをしたとして罰金を科されてもしている。

 “悪童”“お騒がせ男”と形容されることも多いが、錦織が「軽くトップ10にいける選手」と語るように才能は誰しも認めるところ。プレーそのものでも魅せることができる“歩くエンターテインメント”。これまで3戦全敗と相性が悪く、「悪夢だよ」と語る錦織との3回戦。勝敗は別にしてなぜかハラハラしてしまうのである。(雨宮 圭吾)

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2018年7月7日のニュース