国枝復権「昇龍拳がうまく出なかった」もコートではラスボス級強さ

[ 2018年6月9日 22:52 ]

全仏オープン車いすの部決勝   国枝慎吾7―6、6―0グスタボ・フェルナンデス ( 2018年6月9日    ローランギャロス )

車いすの部男子シングルスで3年ぶり7度目の優勝を決め、ガッツポーズする国枝慎吾
Photo By 共同

 今大会の選手ラウンジにはアーケードゲーム「ストリートファイター2」の筐体(きょうたい)が置かれている。“スト2世代”の国枝慎吾(34=ユニクロ)も雨の待ち時間などに楽しみ、自らのフェイスブックにプレー動画をアップしていた。それについて聞くと「ジョイスティックではうまく実力が出なかった。もっとコンボをつなげられるはずなのに、昇龍拳がうまく出なかった」とちょっと残念そうに話していた。

 だがジョイスティックはうまく操れなくても、ラケットを持たせれば無双なプレーだった。第2シードのグスタボ・フェルナンデス(24=アルゼンチン)との決勝は、第1セットが85分の大熱戦。第12ゲームでは緊迫した場面で「相手が下がっていたので」とアンダーサーブを試した。タイブレークでは最初のポイントでドロップショットに必死に食らいつき、ロブショットでミニブレークに成功。「あれをファイトして取り切って流れが変わった。タイブレークを取れたのが全て」とあらゆるショットを駆使して相手を攻略した。9本目のセットポイントでこのセットを奪うと、試合は一方的な展開となった。

 16年2月に世界1位から陥落し、同4月には右肘の手術を受けた。リオ・パラリンピックでは3連覇を逃して「もう一度世界1位になるのは難しいかも」と不安になったという。しかし復権への取り組みは着実に進めていた。パワフルな若手により攻撃的なプレーで対抗するため、昨季はバックハンドをグリップから大改造。それが済むと今年4月からは岩見亮コーチを新コーチを招いた。車いすテニスの指導経験がない元プロに師事することで「固定観念を脱したかった。一般のプロと僕たちの常識にはギャップがあった」とネットプレーやサーブのコースなど戦術面で新境地を求めた。

 その結果として4大大会連覇と1位復帰。準決勝後には「リオ五輪前の僕でも今のレベルにはない。今のところキャリアで最強だと思う」と言い、決勝後も改めて「一皮むけた」と自らの成長を語った。目指す先は20年の東京パラリンピック。ラスボス級の強さを取り戻した国枝は究極進化の過程にある。

続きを表示

2018年6月9日のニュース