働きすぎ? でもこれがスターの底力 ジェームズに見るNBAトップ選手のずば抜けたスタミナ

[ 2018年5月7日 09:30 ]

プレーオフで活躍するキャバリアーズのジェームズ(AP)
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 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】バスケットボール(競技レベル)に42分出場したときの消費カロリーを計算してみた。複数存在しているインターネットのカロリー系サイトを利用させてもらったのだが、だいたい670〜710キロ・カロリー。個人的な目安で申し訳ないが、この数値、私が自分なりに一生懸命走ったケースではだいたい12〜13キロの距離に相当する。

 どうってことない?確かにそうかもしれない。しかし例えばその消費活動が2、3日に1回のペースでやってきたらどうだろう…。しかもすでにそんな生活が始まって半年以上が経過。当該人物の年齢は33歳で、疲労はかなり蓄積されているはずだ。決して若いとはいいがたい年齢。もし私がこのカロリーをこのペースで消費していたら、たぶんこの原稿を書いていない。どこかできっと寝込んでいるはずだから…。

 その33歳こそが、今ポスト・シーズンでは大車輪の活躍を見せているNBAキャバリアーズのレブロン・ジェームズ。4月15日に始まったプレーオフではここまで10試合を消化しているが、うち9試合で彼の出場時間は40分以上。NBAの1クオーターは国際ルールより2分長い12分間で、1試合フル出場すると48分。なので平均42分のジェームズはほとんどの試合でコートにずっと立ち続けている。しかも彼は一般男性よりかなり重い113キロ。これで計算すると競技レベルのバスケを42分プレーすると950キロ・カロリー前後になる。

 レギュラーシーズンでたっぷり休養しているなら理解もできるが、彼は全82試合に出場。主力選手が休養のために欠場するのが当たり前になった時代としては極めて異例のフル出場だ。しかも今季の1試合平均の出場時間(36・9分)はリーグ1位。その数値はプレーオフに入ってさらに増えた。そして精神的にもこたえるはずの土壇場では、チームの運命を1人で握っているかのように常に自分で攻め立てる。彼の選手としての評価は得点などの個人成績ではなく、このきびしい環境の中で常に圧力をかけられながらそれを跳ね返していく肉体と精神のスタミナで判断するべきものだろう。

 今季の年俸はリーグ2位の3328万5709ドル(約36億2800万円)。「高給取りだから働いて当然」いう声もあるが、3438万2550ドル(約37億4800万円)で年俸1位のステフィン・カリー(30=ウォリアーズ)は今季、足首や膝の故障で31試合を欠場している。

 キャバリアーズは東地区全体4位でプレーオフに進出したが、5位ペイサーズと対戦した1回戦では最終第7戦まで戦わざるをえなかった。決して楽な道のりを歩んでいるわけではないので、レギュラーシーズン以上にジェームズへの負担は増えている。さてその重い重い荷物をしょってどこまで突き進むことができるのか?試合が終わるたびに私は彼の出場時間をチェックしながら、心の中で「ご苦労さんです」とつぶやいて一礼している。

 さて消費カロリーにピンとこなかった方、少し例を増やそう。基準は私と同じ体重65キロの男性。700キロ・カロリーを費やすには水泳ならクロールで1時間28分、柔道もほぼ同じ時間が必要だ。軽めのサッカーなら1時間43分で、登山ならザックをしょって1時間35分を休まずにエッサホイサ。もし卓球のラケットを手にするなら3時間25分ほどラリーを打ち合わないといけない。それも中1日、中2日で来る日も来る日も…。

 おっとジェームズがあまりにも珍しい存在のようにとられかねないので、他にも例を挙げておこう。

 その選手はNBAに計15シーズン在籍したが、うち9シーズンでレギュラーシーズンにフル出場(82試合)している。生涯平均の1試合出場時間は38・3分でジェームズの通算記録(38・8分)とほとんど変わりはない。しかもファイナルには6回出場してすべて優勝。休まずに一生懸命に働いて栄光を勝ち取っている。

 無事是名馬なり。だからこそマイケル・ジョーダン(元ブルズ)に対する評価は依然として色あせない。タイトなスケジュールの中で故障せずに結果を出すこと。それをこなせるのが真のスーパースターの姿だと思う。

 ではきょうはちょっと気合を入れて700キロ・カロリーを消化してみようと思う。ランニング・ウォッチの設定ペースは3%アップ。問題はこの老いた体がはたしてその“理想”を追いかけてくれるかどうか…。ああレブロンのスタミナが少しでもあったらなあ〜。

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には7年連続で出場。今年の東京マラソンは4時間39分で完走。

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2018年5月7日のニュース